初めての都市
シキあるところに汚染獣あり
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ンテンスが言ったことを思い出す。
それでいいとシキは思っている。リンテンスほどの技量を持つくらいなら、剣や刀を持った方が早いし、そもそも才能の壁はどうあがいても覆せない。
だが、この陣だけはリンテンス以上の出来を本人からもらっていた。
「……さて、よくも友達を泣かせてくれたな」
剄を抑えながら、シキは暴れている汚染獣を睨みつけた。
本来ならこの都市の武芸者に任せるべきなのだろう。いや、シキもそのつもりだったし、戦うつもりはなかった。精々、汚染獣からメイシェンたちを守る程度にはするつもりだった。
しかし、怯えている三人を見た瞬間、シキの体は勝手に動いていた。
それだけ三人の存在がシキの中で大きくなっていたのだろう。悪い気持ちはしなかった。
「全方位からの刺突だ。死に腐れ」
繰弦曲・魔弾。
三百六十度、全方位からの刺突。避けることなど出来るはずがなかった。
体中を刺し貫かれた汚染獣は、一瞬で絶命した。
「……」
死亡を確認し体中の力を抜こうとした時だ。大音量の声がシキを襲った。
それがシキを称える声だと気づいたのは、その三秒後だった。
○オマケ
これ汚染獣襲撃から一週間経った、ある日の新聞記事である。
――――今回の襲撃で、多数の死傷者を出したが交叉騎士団の活躍により被害は最小限に抑えられた。
しかし、三体の雄性体が念威端子の監視網が届かない、遥か上空から強襲し、ヨルテムに侵入を許す。運が悪いことに、避難途中であった市民の近くへ一体が飛来。あわや大虐殺といったところで、英雄シキ・マーフェスが汚染獣を撃退。
あっという間に三体を倒したシキ・マーフェスは、幼生体の撃退にも貢献。鋼糸と呼ばれる特殊な錬金鋼で、一日かかると思われていた幼生体駆除を、一時間で完了させた。
この件で、都市長マーベラス・レッド氏は、シキ・マーフェスを都市の英雄として称え、表彰すると発表した。
件のシキ・マーフェスだが、外部の武芸者であることとまだ年端もいかない『少女』ということが判明している。取材は交叉騎士団により断られているが、近いうちに記者会見を行うと発表されている。
彼女はどんな人物なのか、今から楽しみである。
「……少女?」
シキは、一時的に住むことになった交叉騎士団の宿舎で新聞記事を読みながら震えていた。
どこから撮ったのか、鋼糸を操っているシキの写真が大きく貼られており、見出しには『期待の天才美少女武芸者現る!』とデカデカと書かれていた。
「お、俺は、俺は男だァああああああああああああっ!!」
新聞を破り捨てながら叫んだ声は、ヨルテム中に響き渡ったとかなんやら。
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