第百三十五話 退きの戦その九
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「ここで少し暴れてみせて」
「勝三郎殿を驚かせるか」
「そうしてみせます」
「わしもじゃ」
蜂須賀もだった、迫る大軍を見ながら不敵に笑ってさえいる。
「父上に跡は問題ないと教えてやろうぞ」
「ほう、小六殿の様に動いてみせるか」
「父上以上です」
父によく似ている若いその顔での笑みだった。
「それを見せてやります」
「頼むぞ、ではな」
「わしもやるか」
「わしもじゃ」
黒田と細川も名乗りを挙げる、
「父上ばかり言われておるからな」
「織田家にも細川家があるということを見せようぞ」
「さて、ではな」
「思う存分やってやるか」
彼等も父に負けまいと意気を見せていた、そして。
福島もその大槍を手にして前を見据えていた、その目にはいささかの怯えもない。
その怯えのない目で羽柴にも言うのだ。
「日吉殿では」
「ああ、猿でよいわ」
「では猿殿、これより」
「うむ、頼んだぞ」
「思う存分暴れて退けてですな」
「都まで退くぞ」
こう言ってそうしてだった、鉄砲を派手に撃ち。
弓矢も放つ、それでも数と勢いを頼りに来る大軍に対して。
長槍を一斉に立てた、織田家の槍の長さはどの家のものにも勝る。
朝倉の者達のそれの倍はある、浅井家にとってもそれはだった。
「敵に回すと余計にだな」
「うむ、長いな」
「何という長い槍だ」
「これでは近寄れぬぞ」
「とてもな」
「いや、安心せよ」
ここでも長政が言う、そしてだった。
その長槍の衾に自ら突っ込む、それと共にその手に持っている槍を横に払った、それによって織田家の長槍の柄を草を刈る様に刈ってみせたのだ。
そのうえでだ、己の兵達に顔を向けて叫んだ。
「どの様な槍も刃がなければただの棒よ!」
「おお、そうでした」
「穂先さえなければですな」
「槍もただの棒」
「恐ることはありませぬ」
「怯むな!切れ!」
その長槍の先をだというのだ。
「さすれば恐ることはない!」
「畏まりました!」
浅井の兵達は主の言葉に再び士気を取り戻した、そうしてその主に続き。
その手にしている刀で槍の先を切っていきそのうえで突き進んできた、彼等はそのまま雪崩れ込もうとしていた。
しかしまずは蜂須賀が己の槍を手に出た、その槍を縦横に思いきり振るい迫る浅井の者達を吹き飛ばした。
「甘いわ!」
「そうじゃ、長槍で終わりではないわ!」
「我等もおるわ!」
黒田と細川も出る、そして。
突進してくる浅井の兵達をそれぞれの槍で吹き飛ばす、それは池田もだった。
慶次のもの程ではないが大きな朱槍で浅井の足軽達を寄せつけない、そうして縦横に戦いそうして防いでいた。
加藤嘉明もだ、福島と共に出て戦っていた。
「敵は多いのう」
「ははは、幾
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