第百三十五話 退きの戦その七
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「殿に続け!」
「遅れるな!」
こう叫んでだった、浅井の軍勢一万は一丸となって羽柴が率いる織田家の後詰に突っ込んで来た、それを見てだった。
羽柴は馬上から彼の最も大きな声で叫んだ。
「鉄砲じゃ!急げ!」
「は、はい!」
「鉄砲ですね!」
「急げ!このままでは撃つ前に突っ込まれる!」
このことを恐れての命だ。
「もう弾は込めておるな!」
「はい!」
「後は撃つだけです!」
「では撃て!」
早速だった、そうしろというのだ。
「よいな!」
「わかりました!」
足軽達は羽柴の必死の声に応え鉄砲を構える、そして。
その鉄砲を放つ、轟音が轟き浅いの者達を撃つ、それで一旦動きを止めた。
だがそれは一瞬のことだ、長政はその鉄砲にも怯まずに言う。
「案ずるな、鉄砲はそう当たるものではない」
「?そういえば音は凄いですが」
「それでも」
傷ついた者はいるが倒れている者は案外少ない、浅井の者達は長政のその言葉で気付いたのである。
「これといって」
「倒れている者は多くありませぬ」
「確かに当たれば死ぬ」
これは事実だ、傷つきもする。
「しかしじゃ」
「それでもですか」
「当たることはですか」
「間合いが遠ければ当たるものではない」
それが鉄砲だというのだ。
「今の距離ではな」
「そう当たりませぬか」
「恐れているよりも」
「そうなのですな」
「そして突き進めばさらに当たらぬ」
これはかえてだというのだ、前に出れば。
「よいな、怯まずにだ」
「進みますか」
「ここは」
「そうじゃ、進みじゃ」
「後詰を突き崩す」
「そうしますか」
「攻めるのみじゃ」
それも休むことなく、今はそうすべきだというのだ。
「弓や槍が来てもな」
「それでもですな」
「今は」
「わしも行く」
それも自らだ、長政は己が軍勢の先頭に立ち続けている。
「ではな」
「わかりました、では」
「殿と共に」
足軽達も応える、そしてだった。
浅井家の軍勢は鉄砲に怯まずさらに突き進む、紺色の軍勢が集まりさながら群青の津波であった。
その津波を見てだ、羽柴は次の迎撃にかかる。その手はというと。
「弓じゃ!」
「弓ですな」
「今回も」
「よいな、狙いを定めることはない」
その必要はないというのだ。
「それよりもじゃ」
「数を撃ちますか」
「ここは」
「そうじゃ、とにかく数じゃ」
弓矢をどんどん放てというのだ。
「数を撃ってじゃ」
「浅井殿の軍勢と止めますか」
「今は」
「そうせよ、だが長政殿は出来物」
羽柴はこのことも頭の中に入れている、それでこうも言うのだ。
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