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フィガロの結婚
41部分:第四幕その五
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第四幕その五

「朿ある薔薇で」
「愛嬌を振りまく狐で」
「おっとりした牝鹿で」
「意地の悪い鳩」
 あえて悪く動物達に例え続ける。
「人を欺く天才で」
「偽り、誤魔化し、愛も感じない」
「憐れみも感じない」
「苦悩の友達だ」
 言い合いながら答えを出してきた。
「それ以上はもう言わないでおこう」
「そうだな」
「誰でも知っていることだからな」
「その通りだ」
 この話の後で一人に戻った。とにかく彼も苦悩していた。まさかと思っていたことがそうなって。
 その頃闇夜の中では夫人とスザンナがいた。だがどちらもお互い服を交換している。
「では奥方様」
「ええ」
 まずはスザンナが夫人に声をかけてきていた。
「お義母さんが教えてくれたことですけれど」
「間に合って何よりです」
 ここでマルチェリーナが出て来たのだった。
「全く。うちの子があんなに嫉妬深いなんて」
「有り難うお義母さん」
 スザンナはマルチェリーナに対して礼を述べた。
「おかげで助かるわ」
「全く。フィガロも意外と早とちりなのね」
「男は皆そうなのよ」
 やはりここでは人生の重さがわかるのだった。
「それには気をつけないと」
「そうね。けれどまずはこれで何とかなりそうだわ」
「私はこれで」
 マルチェリーナは一旦隠れることにしたのだった。
「ちょっとね」
「ええ。それじゃあ」
「有り難う」
 マルチェリーナはバルバリーナが入ったあずまやに入る。こうしてスザンナと夫人はまた二人になった。そのうえで二人で話をするのだった。
「奥方様。お寒いですか?」
「ええ」
 見れば夫人は少し身体を寒そうにさせていた。
「少しね。冷える夜ね」
「確かに」
「私は部屋にいるわ」
 夫人はこう言って去ろうとする。ところがそれは止めたのだった。
「いえ」
「いえ?」
「あそこに隠れるわ」
 側の木陰を見ての言葉だった。
「あそこならいいかしら」
「そうですね。すぐに終わりますし」
「そうよね。だったら」
 こうして夫人はその木陰に隠れた。これでスザンナは一人になった。それでわざと動くとフィガロにそれが見えた。フィガロはそれを見て歯噛みした。
「来たな」
 遂に見つけた、もうそれだけで尻尾を掴んだつもりだった。
「これからが勝負だ」
「奥方様」
 フィガロに気付きつつ夫人に声をかける。
「来ていますわ」
「フィガロね」
「はい。私は暫くここで」
 フィガロのいる方を横目で見ながら彼女に話すのだった。
「仕掛けますから」
「頑張ってね」
「ええ。それでは」
 夫人に応えてから相変わらずフィガロを横目で見る。気付いてはいるがわざと気付いていないふりをする。この辺りは見事な芝居だった。
 その芝居を
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