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ドラクエX・ドーラちゃんの外伝
お母さんとドーラちゃん
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 今すぐ力を持てるなら、こんなことを言わせたり。
 そんな目に遭わせたり、絶対にさせないのに。

「愛してるわ、ドーラ。生まれてきてくれて、ありがとう」

 そんなことを言って貰う資格は、きっと私には無いのだけど。

 生んでくれて、ありがとう。
 もう一度、生きる機会をくれて、ありがとう。
 きっと短い時間だけれど、あなたが娘に注ぐ愛と、私に与えてくれた命に、報いるためにも。
 どうすればそうできるかなんて、まだわからなくても。

 私は、あなたも、諦めない。
 ずっと先のことでも、きっと、あなたも一緒に。

 幸せに、なりましょう。





 その夜、ママンは、マーサさんは。
 魔物の気配を察知して、私を部屋付きの女性に預けて、隠して。

 私が泣き出して見付かる危険を減らすために、抵抗して時間をかけることも無く、あっさりと。

 魔物に、(さら)われて行きました。


 パパンは、パパスさんは、泣きながら事情を話す女性を咎めはせず、赦しを与えるように頷きかけながらも、気遣う言葉をかけるまでの余裕は無く。

 受け取った私を抱き締めて、何かを堪えるように、押し黙っていました。


 火の消えたように暗く静まりかえった王宮で、それでもなんとなく慌ただしい、落ち着かない雰囲気を感じながら、しばらくを過ごし。

 パパンは王位を棄てて、国を棄てて。
 単身旅立とうとするのを、同じく身分も何もかも棄ててただひとりの主を選んだ、サンチョと。
 ここで置いていかれてたまるかと、それこそ火の着いたように泣き出した、私を連れて。


「この国は、既に弟に任せた。生きて帰ると思うな」

 祖国を出て、帰らぬ覚悟の、旅に出ました。

 そんな覚悟はきっとぶち壊してやると決意を固める、私を。腕に、抱いて。


 自己犠牲とか、いいですから!
 どうしたらいいかホントわかんないけど、勝算が、無くは無いから!

 きっと、みんなで!

 幸せに、なりましょう!
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