1-2話
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…鉄の塊を支える網、其を成す大気の壁。
それは、巨大な受け皿。
現象が紡がれ、現実のものになった。
大気の受け皿が、落ちていく旅客機の下に現れる。
透明だが、角度を変えればその歪みが見える高圧縮の空気だ。
旅客機の形を保ち、尚且つ落下速度を殺すために作り上げた分厚い膜。
巨大な受け皿は、旅客機を受けとめる。
機内で衝撃を受けた乗客の悲鳴が一層けたたましく響く。
失速に等しい旅客機は、その腹を滑らせて失った揚力をその翼に吹き込んで一瞬だけ持ち直した…かのように見えた。
大気の膜が押し潰されていた。
固形ではなく気体でしかないその受け皿は、その圧倒的な重さに削られた。
圧縮して固めた空気は拡散し、重力に引っ張られる鉄の塊は壁を破った。
「(…重すぎる!!)」
単純にそう叫びたくなった。
落下の速度は若干削いだ。 だがそれだけだ。
旅客機は鉄の塊だ。 そしてその中には何百人ものの人と大量の荷物を含んでいる。
その重さを計算したら頭が痛くなる。 金魚掬いのポイみたいなものだ。
支えられる強度はあれど、暴れれば当然破れるのと一緒だ。
しかし、それ以上強度を高めれば、その重みと落下運動のエネルギーに機体もろとも乗客が耐えられないのだ。
いくら墜落を防ぐためとはいえ…ヘタに圧力を高めれば、墜落した瞬間と変わりないものになってしまう。
…一度では諦めない。 何度でもやろう。
自分のやっている事が無駄だと諦めるのなら…アタシは最初からこうしてはいない!
「―――、――、―」
イメージを紡ぎ、受け皿を重ねる。
旅客機は何度も緩和する動きに胴体を揺らしながらも、凶悪な重さで救命するはずの受け皿を砕く。
そして受け皿の成れの果ては何層ものの大気の輪を作り上げる。
翼に張り付いているアタシは振り落とされないよう手に力を込める。
地上に辿り着くまでのチキンレースの限界点は近づく。
もし、これで止められなかったら…自分を優先しないといけない。
既に二桁に至るほど層が破られた。
地面もだいぶ近い。
あと数枚は張れるが…そこからはもう限界だ。
ここまで来たら…といっそアタシは少し無茶を敢行しようとした。
「―――、――、―」
もっと厚く、そして硬く、大気を固めるイメージを創り出す。
今度は、視界が大きく歪んだ。
光が歪みそうな厚い空気の層が接触すると…旅客機に衝撃が走った。
速度は殺しても、落下し続ける旅客機は壁に衝突する。
圧縮された空気を散らしながらも、鉄の胴体が崩壊してしまいそうな怪音を轟かせる。
持たせてっ…と心の中で強く訴えて、胸が締まりそうな思いを詰まら
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