1-2話
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溢れるほどの万能感と、開放感が心身を満たして…アタシの感覚が接続された。
体の中で五感に似た感覚器官が開花するような、知覚する世界が大幅に拡大される体感。
アタシと世界は“繋がった”。
「―――」
“繋がる”と同時に、体は不協和から開放された。
落ちるという動きに惑わされず、世界の感覚によって姿勢が安定した。
激流も身を委ねれば清流となるように、落下する流れに合わせる。
重力も、慣性も、運動も…世界の物理法則による“動き”を読めるアタシは、暴れる空間の中、根を張ったかのように足元が安定する。
「(―――視える)」
感覚を通してハッキリと視える。
旅客機の形を指でなぞるように手応えが明確になり、手を水に浸けるように大気の流れが流線を描いているのがわかる。
辺り一帯はアタシの意識によって掌握された。
この巨大な旅客機全体を包み込んでもなお余りあるアタシの領域。
―――それゆえに、判ってしまう。
“何か”に捕まっていた。
世界を広く感じるアタシの感覚は視た。
辺り丸ごと包み込むような大きな存在が旅客機を捉えた。
まるで巨人の手に握られたかのように、重力や風力を無視して急激な速度で墜落していく。
エンジンがあろうとも、巨大な翼があろうとも、風に頼る事でしか飛ぶ事ができない旅客機は、圧倒的な力によって天空から引きずりおろされるだけだった。
それはありえない現象だ。
だが実際にそれは起こっている。
どんな理由があって世界がそれを認めているのかわからないが…神羅万象という名のシステム内で、それは現象という形をして、旅客機をどこかへと引きずり込もうとしている“流れ”をたしかに感じている。
世の中にはそういうものが存在する。
電磁の荒れる場に呑み込まれたり、重力の境目に踏み込んでしまった事で堕ちたりなど…世の中には謎めいていながらもこういった現象の魔手が有り得るのだ。
既に高度は地上からわずか数百メートルにまで下がっていた。
まさか、これほど低くなっているとは思わなかった。
旅客機の中にいる間に一体どれだけ時間がかかっていたのか…それとも、落ちる速度がそれほどまでなのか。
これはもはや…制御機動に戻す事は不可能だ…!
しかし…この時点でも、不時着は可能だ。
「(…って、なにこれ!?)」
不時着は出来る…だがそれは衝撃を殺すための海があるからだ。
だがしかし、下は……海の代わりに大地が広がっていた。
なぜだ…と自問せずにはいられなかった。
グアムから日本の間のルートで、この辺りには小島はおろか陸地がほとんどない海域のはずなのだ。
おかしい…だけど、考える間はな
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