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探し求めてエデンの檻
1-2話
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にして数秒の事。

「ふむ……収まったみたいね」

 旅客機は静まり返った。
 峠ならぬ、波は越えたようだ。

 辺りはトランクから飛び出た荷物が散乱して、台風一過の惨状と化していた。
 耳には風を切る鈍い轟音が入ってくるようになり、悲鳴の代わりに今度は動揺の声が広がる。
 周りで…エアポケットか?や、乱気流か?などと動転する声がざわめく。

「み、皆さん! お、落ち着いてくださいっ、どうかご着席ください!」

 傍で混乱とは違う声がしてそちらに視線を向けると、先ほど私にコーヒーを渡してくれたACがそこにいた。
 あの揺れでもそれほど離れていなかったのかだいぶ近くにいた。 怪我してない所を見ると運がイイ。
 ACとしての客らを宥めようとしているが、その姿勢は立派だった、中々肝が据わっている…こんな突然の事態にこうも早く立ち直れるのはベテランでなければ難しい所だ。
 新米だからか腰砕けになっていて立てないようであるけど、それでも上出来といった所だ。
 心構えが出来ているか、先人の教えがよかったからなのかもしれない。

「大丈夫?」

 立てるかしら?と言って、ご立派ながらも情けない体勢でいたCAに手を差し伸べた。
 誰も耳を傾けなどしない動揺と恐れが千々乱れるこの状況で、まともに意思疎通ができる者がいた事に顔を明るくさせた。

「あ…はい! あ、りがとう…ございます」

 心細かったのだろうか、嬉しそうに声を弾ませながら立ち上がった。

 軽く頭を垂れて礼をしてから間を置かずに切り替わって周りを宥める行動へと戻った。
 す…すぐにアナウンスしますからどうか皆様落ち着いてください、と周りに向けて気丈に振舞おうとしてそう言う。
 新米だけど、やはりこのCAは行動の速さと肝がある…しかし、彼女の言葉は届く事はない。


 フッ…と、突如の闇の(とばり)が降りた。


 灯りを必要としない昼の光が消え失せた。
 窓の外には地平線の果てまで陽の光が届かない闇が広がっていた。
 これは日が落ちたとか…そんなレベルじゃない、日食でもありえないような怪奇現象だ。

 強烈な揺れを体験から間もなく、闇という身近な恐怖に襲いかかられば、混乱の声が一層激しくなる。
 困惑の色が濃くなり、激しい喧騒がCAの声をかき消す。
 誰も理解できない。 現代の知識ではとても追いつかない状況の変化に理解が及ばない者らは狭い機内で迷走する。

 通常では理解できないだろう。
 ましてやこの状況を説明出来る者などいない。

 正直、アタシですらよくわからない…こんな密閉空間なのだから伝わる情報が極端に希薄で全く“同調”出来ないのが歯痒かった。
 だが、これだけはわかる…これは有り触れた自然現象ではない
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