1-2話
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学生と言えば……昨日の遭遇した“アレ”も学生だった事を思い出す。
「(―――…あの獅子も、学生だったわね)」
それは、グアムの広場で起きた小さな波乱だった。
そこで一人の獅子を見つけた。
グアムの近くにいる軍人らしき男達が、十代半ばの学生を相手に乱闘するというものだった。
普通ならそれは多勢無勢のリンチになるはずの光景だ。
現役軍人でなくても、男達は屈強な肉体を持っていて血の気が多い輩だった。
だが、結果はその逆。
その学生は何人もの男を返り討ちにし、地に沈めるという所業を起こした。
男達は血を流し、骨が折れたのも何人かいて、気絶に至っていない者は戦意が喪失していた。
それとは対照的に、攻撃者は全く傷を負う事はなかったという結末。
その子は強かった…だがそれ以上に、他の普通とは違うものがあった。
片手で大人の体を掴み上げるほどの剛力を持ち、光るような戦闘のセンスがある。 おまけに遠慮が微塵ともない。
黒の色をしておらず金に映る髪、大人顔負けの長身を持ち、アタシの友人とはまた違ったタイプの鋭い眼をさせた学生。
まるでライオンを思わせる男の子。
―――まさに獅子だ。
なんとなく興味を惹かれた。
獅子には…“獅子のような存在”には浅からぬ過去が自分にはあった。
だから、無視する事ができなかった。
暴力など関係なしに、有象無象とは違う引力を秘める彼に近づいた。
“渦中の中に踏み込んで”観察してみたが…彼は、ずいぶんと退屈そうな眼をさせていた。
野生の獣に近い獰猛な性質を秘め、苛立ちと退屈が入り交じった眼をさせた少年。
類い稀な力と才能あるのに、社会の中では活かされない素質が彼を燻らせている。
力に精神が追従し、周りに融け込める事ができず、能力に寄りかかる生き方になってしまう社会不適合者…。
あの時、互いに視線を交わしたが…一言も言葉を交わす事もなかった。
結局、教師らしき人達がやってきて彼からその場を立ち去る事で終わった。
それがつい昨日の事―――。
縁も所縁もないから、当然彼とはそれっきりだ。
グアムの地でたまたま出会っただけの巡り合せ。
だがしかし…彼がこの学生達この中に混じっているとしたら…。
「(奇縁があったら…もしかしたら顔を合わすかも知れないわね)」
そう思うと、ちょっと楽しみになった。
見上げるほどの体格はあっても、彼はアタシにとっては“男の子”なのだ。
もしかしたら、一回り近く年下だと思われる男の子に出会えるかもしれない、というそんな運任せ…いや、示し合わせが訪れる事をちょっと期待を寄せた。
「ん」
ふと、視線を感じた。
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