第四十九話 スペンサーの剣その九
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「カドモスは彼等の帰りが遅く気になったところで彼等を探しに出てそして竜と遭ったのだ」
「その従者を皆殺しにした竜とですか」
「遭ってそして戦い従者達の仇を取ったのだ」
「で、そこから骸骨の兵隊を出してですね」
「テーバイの基となった」
「でしたね」
「そういうことだ」
ここまで高橋に話す。
「もっともテーバイの基になったという話だが」
「それと共にこいつの強さについての話でもあるんですね」
「この竜は強い」
確かにそうだというのだ。
「従者達を皆殺しにしたからな」
「それだけの強さがあるんですね」
「カドモスも苦戦した」
勝つには勝ったがだというのだ。
「それでもだ」
「そうですか」
「では倒すか」
「はい、それじゃあ」
「俺が左にいく」
工藤は高橋の左にいてその位置から言った。
「君は右に行ってくれ」
「わかりました。それじゃあ」
高橋も工藤のその言葉に頷く。かくしてだった。
高橋は実際に右に動いた。工藤は左に。
そのうえで怪物を攻めようとする。その動きの中で高橋はこう工藤に言った。
「頭が一つしかないのは」
「楽か」
「これまで結構頭が幾つもある怪物もいましたよね」
「確かにな」
「二つの首を持ってる化け物みたいに大きな犬とか」
怪物だから当然だが高橋はあえてこう表現した。
「いましたから」
「オルトロスだな」
工藤はその二つ首の犬の名前を言った。
「ケルベロスの兄弟だった」
「そうでした。そいつでしたね」
「そいつは俺達の攻撃に対して」
「それぞれの頭で反応してきましたから」
高橋はその時のことを思い出して言う。
「手こずりましたね」
「そうだな。だが」
「だが、ですね」
「この竜は頭は一つしかない」
丁度工藤の方に向いている。高橋はその目で警戒しているだけだ。
「攻めるにはな」
「楽ですね」
「俺がこのまま引き付ける」
こう高橋に告げる。
「君が攻めてくれ」
「わかりました。問題は弱点ですね」
「腹か」
工藤は竜の腹を見た。大蛇そのものの腹にも鱗があるがそれは背中のそれよりも遥かに薄く柔らかい感じだ。
その腹を見ながら高橋に言うのである。
「そこを一気にだ」
「突き刺せばですね」
「それでかなり違う」
「問題は尻尾ですね」
竜の尾は今はゆっくりと動いている。だが高橋は竜が自分をちらりとであるが警戒の目で見ていることから言うのだった。
「それですね」
「そうだな。頭で俺を狙いだ」
「尻尾で俺ですね」
「そう来る」
工藤は竜の牙が何時来てもいい様に身構えながら高橋に答えた。
「常山の蛇だ」
「頭と尾でそれぞれ狙う」
「そう来る。だからだ」
「ここはですね」
「君は尾に注意してくれ」
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