第三十七話 夏祭りその十一
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「神社に来てるからね」
「じゃあお参りして」
「それでよね」
「御願いしよう」
賽銭を入れてそうしてだというのだ。
「お守りは買えないけれどね」
「というか今お守り売れないよな」
美優はこのことを察して問うた。
「流石に」
「ええ、巫女さん達も皆忙しいから」
それでだった、お守りの売り場が開いていないのは。
「ちょっと今はね」
「そりゃ忙しいよな、今は」
「うちの神社もそうだから」
夏祭りを開く時はだというのだ。
「バイトの巫女さんも総動員になるから」
「っていうとその時って」
「まさか」
「ええ、バイト料は出すから」
景子も四人に言う。
「だからね」
「バイトに来てくれっていうのね」
「巫女さんとして」
「そう、神社は夏祭りと秋祭りとお正月の時はね」
忙しいというのだ、商売で言うと稼ぎ時だ。
「人手が幾らあっても足りないから」
「じゃあその時は」
「巫女さんの服を着てなのね」
「頼むわね、本当に」
言葉は切実だった。
「戦場みたいに忙しいから」
「ああ、みたいだな」
ここでだった、美優はふと出店が並んでいるところを見た。するとそこの御神酒を出すところで巫女さん達が忙しく動いている。
それを見てだ、こう言うのだった。
「もう右に左にってな」
「裏方で本当に何でもしないといけないから」
「巫女さんって優雅そうだけれど」
「服は可愛いけれどね」
景子は今度は琴乃に述べた。
「夏は暑いし」
「暑いの?」
「上も暑くて」
上着の白い着物のことをまず話す。
「下の赤い袴もね」
「ああ、袴だとね」
「わかるでしょ、一回着たから」
「あの時は春だったからそんなに思わなかったけれど」
「夏はね」
今の季節はというと。
「物凄く暑いから。ただ冬は下に少し着るだけで暖かくなるから」
「スパッツとか?」
「そう、ズボンでもいいわよ」
袴の下にそれを穿けるというのだ。
「冬はね、けれどね」
「夏はなのね」
「そう、夏はね」
その夏はだというと。
「苦労するから。一応夏用の薄い服もあるけれど」
「それでも暑いのね」
「だからその時は覚悟してね」
暑いということをだというのだ。
「結構動きにくいところもあるから」
「袴ってね」
彩夏も言う、ここで。
「スカートよりも身体につくからね」
「そう、慣れないとね」
「景子ちゃんは慣れてるわよね」
「物心つく前から着てるし」
それでだというのだ。
「慣れてるのよ」
「だからなのね」
「そう、私は慣れてるからまだ大丈夫だけれど」
だがそれでもだというのだ、四人は。
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