第三十八話 公的資金
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丸裸にされる様なものだからな。理性では納得しても感情では不満が有るという事だ。しかし始めればそれなりに得る所も有ると分かるはずだ。自分自身の目で確認できるというのは大きい。
「貴族達に直接公的資金を投入するのではなく債務を帝国政府が引き受ける形を取りましょう。帝国政府が債権者と交渉し債務を支払うのです」
「それは大変ではありませんか、貴族達にある程度任せた方が良いと思うのですが」
フレーゲルの提案に皆が頷いた。その方が良いといった表情をしている。
「フレーゲル内務尚書、債務の中には法律で定められた金利を超える物も有るかもしれません」
「……」
「借金が多額になれば貸す方は渋ります、借りるには金利が高くても受け入れるしかない。貴族に任せればそのまま支払うでしょう、政府が全面に立ち不当に貪った分は返還させた方が良い」
ルンプ司法尚書が溜息を吐いた。俺も溜息を吐きたい。人間なんてやってることは何年、いや何世代経っても変わらない。この世界でも元の世界でも……。
「それと今回債務を肩代わりした貴族には監督官を派遣しましょう」
「監督官?」
「領地経営に失敗したのです。帝国政府から監督官を派遣し経営に関してはその同意を必要とさせる……。帝国政府に債務を返し終わるまで政府の監督下に置くのです」
リヒテンラーデ侯が苦笑を漏らした。
「厳しいの」
「税金を投入しているんですよ、当然でしょう。そうでなければ平民達が怒り出します、政府は貴族に甘いと」
「……」
爺さんが顔を顰めた。だが現実に影響が大きすぎて潰せないなど言ったら甘いと取られても仕方がないのだ。
「決算報告書の管轄は財務省でしょうが監督官は内務省の方が良いでしょう」
「互いに監視させるか」
「監視させるわけではありませんがチェック機関は多い方が良いと思います」
「どうかな、財務尚書、内務尚書」
二人とも頷いた、反対は無しだ。そして国務尚書は義父(おやじ)殿とリッテンハイム侯、そしてルンプ司法尚書に視線を向けた、こちらも反対はしない。つまりルンプは法制化に動くという事になる……。
客人達が帰った後、義父(おやじ)殿が話したい事が有ると言ってきた。表情が厳しい、良くない状況だ。そのまま応接室で二人で向き合った。
「エーリッヒ、先程の決算報告書だが……」
「はい」
「拙い事になるとは思わぬか?」
囁くような声だ。
「と言いますと?」
「当家やリッテンハイム侯爵家はその力を政府に知られれば削ぎ落そうという動きが出るとは思わぬか?」
「……なるほど」
なるほど、それを心配したか……。杞憂とは言えないな。
「お前が言ったな、今は良いが十年後、十五年後は分からぬと。この場合もそれが当て嵌まるとは思わぬか?」
「確かに難しいところで
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