第三十八話 公的資金
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、フレーゲル、ルンプの各尚書も憂鬱そうな表情をしている。
七百五十億の借金を清算するために公的資金を投入する。それを惜しめばその十倍、いや二十倍以上の資金が帝国から消えてしまうだろう。不良債権の整理は素早く大胆に行わなければ悲惨な事になるのだ、公的資金の投入はやむを得ない。幸いここは帝国だ、支持率だの世論だのそんな馬鹿げた感情論で左右されるものを気にする必要は無い。カストロプから没収した財産も有る、金は有るのだ、思い切ってやるべきだ。
「平民への権利拡大は分かるがフェザーン資金の監視、貴族達の抑制というのはどうするつもりだ?」
「貴族を一種の企業とみなしてその領地経営を監視する、その中で流入する資金を監視する。そういう方法しかないでしょう、義父上」
義父(おやじ)殿は不審そうな表情だ。いや他のメンバーも俺が何を言っているか分からないらしい。
「企業と同じように決算報告書を年に二回作成させ帝国政府に提出させるのです。それによって貴族達の領地経営状況、家の資産状況が分かります。同時にフェザーンからどの程度の資金が貴族に流れ込んでいるかも見えてくるでしょう」
「我々もかな、ブラウンシュバイク公」
「我々もです、リッテンハイム侯」
応接室に溜息が溢れた。不満か? しかしこれをやらなければ帝国という国家が見えてこない。
「貴族達の作る決算報告書と一般企業の作る決算報告書、それを合わせれば帝国全体にどの程度の資金が流れ込んでいるかも分かります。景気動向の予測も立て易くなる、そうでは有りませんか、ゲルラッハ子爵」
「確かにその通りですな」
ゲルラッハが答えると皆がまた唸った。
これまでがザルだったのだ。帝国創生当時は貴族も有能な人間が多かった。だから決算報告書の作成など必要なかったのだ。だが今は違う、貴族達の質は劣化し領地経営も満足に出来ない馬鹿共が多くなった。そうである以上監視体制を強化せざるを得ない。
「今回の一件を利用して全ての貴族に決算報告書の作成を義務付けましょう。帝国政府が貴族の不始末を救済するのは今回だけ、以後は救済しない。だから貴族は帝国政府に対してその経営状態を報告する。帝国政府はそれを監査し異常が有れば勧告、指導する。そうする事で領地経営の健全化と貴族の財政状態の健全化を図る……。それにこれを行えばフェザーンの影響を受けやすい貴族も分かります」
「なるほど」
リヒテンラーデ公が相槌を打つと皆が頷いた。
「では先ず貴族達に借金が払えない者は帝国政府に名乗り出るようにと通達するか。そして借金を清算した後で決算報告書の作成を貴族達に義務付ける。どうかな?」
リヒテンラーデ侯が皆に問いかけたが反対者は居なかった。賛成する声が聞こえなかったのはやはり決算報告書など書きたくないという思いが有るのだろう。
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