第29話 黒の破壊神
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、円盤状の光と成って、不規則の動きを繰り返しつつ有希に接近する。
しかし!
しかし、流石は長門有希。俺と暮らした一週間の間に、彼女が示した能力は伊達ではない。
自動追尾能力の有る円月輪と雖も、ギリギリまで招き寄せてから難なく躱して仕舞う。
そう。現在の彼女には女神フォルトゥーナの加護が有ります。更に、フォルトゥーナの能力を行使すれば、円月輪の動きを予測する事も可能ですから。
その刹那、ギリギリの場面で有希に躱される事により、彼女から大きく行き過ぎ、再び体勢を立て直そうとした円月輪を、俺の放った雷撃が空中で捉え、そのまま撃墜して仕舞った。
しかし――――
しかし、その様子を見ていた黒い破壊神が嗤った。まるで、ラーフの口から、瞳から、そして彼の身体そのものから、彼の存在に相応しい瘴気があふれ出したような、そんな気がする嗤いで有った。
「なるほど。英雄には、英雄に相応しい弱点が有る、と言う事か」
その瞬間に発せられた邪気と悪意に染まった嗤いが、俺の全身に怖気を走らせた。
「俺は、英雄なんて言う名前やないで!」
俺がそう叫びながら、ラーフに斬り掛かった。そう。この時が、俺の方からラーフに向けて、初めて先手で攻撃を仕掛けた瞬間であった。
そもそも、俺の剣は後の先。自分の方から動く時は、よほどの能力差がない限り勝機は少ない。
「遅いわ!」
ラーフは光雲から飛び降り、その光雲自体を俺に向かって動かす事に因り盾として使用。
ラーフの呼び出した光雲を両断した俺の口から、その瞬間に、絶望に彩られた叫びが漏れ出た。
そう。そのラーフの口より紡がれた呪文の正体に気付いた俺の口から、絶望の叫びが自然と漏れ出したのだ。
刹那、ラーフを示す漆黒の炎が、有希の全身を包み込んだ。
絶命の叫びさえ上げる事なく、漆黒の炎に沈み込む有希。
一瞬の静寂。
地上。有希の存在した場所には未だ黒き炎に包まれ、俺の方は呆然自失の状態でその様子を見つめるのみ。
戦場は、完全にその戦意を失い、世界の滅びの運命はその瞬間に決した。
そうして……。
「俺の黒炎に焼かれたら、どんな仙人かは知らないが、無事で――――」
ゆっくりと地上に降り立ったラーフが、まるで勝ち誇ったかのように、何かを言い掛けようとした。
――が、しかし!
すべての台詞を口にする前に、ヤツの周囲から爆発的に沸き起こった紅蓮の焔に、ラーフの黒い身体が包まれた。
【有希!】
当初、予定通り、有希に思考の一部領域を明け渡す俺。
俺の能力を有希が扱えるように成って居たが故に、可能と成った同期。
その刹那!
目も眩むような閃光と同時に、ラーフ
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