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ヴァレンタインから一週間
第29話 黒の破壊神
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能力から考えると、今までの戦いは最終的に何時も勝利し続けて来たはずですから。
 このラーフと言う破壊神は。

 但し――
 但し、本当に完全に捉えていたのなら、ラーフの左琵琶骨は、一時的で有ろうとも完全に両断していたはず。
 しかし、実際は、有利なはずの上空を取った形、更に相手の攻撃を待ち構えていた状態で尚、表皮一枚のみに被害を与えるに止まり、致命傷を与える事が出来ない相手。

 そして同時に、ヤツは不死では有るが、無敵ではない事も確認出来たのは大きい。
 基本的には、ヤツの精霊の護りを越えた金属以外による攻撃は効果が有る。

「ホンマに、晴明桔梗印結界は機能しているんやろうか」

 俺が再び独り言のように悪態を吐く。もっとも、これも所詮は時間稼ぎ。有希の準備が整うまで、俺にこの破壊神の注意を引き付けて置く為の小細工。

 その言葉を聞いたラーフが、ニヤリと嗤う。
 そして、

「世界を破壊する職能を持つ俺と、前世の能力を完全に取り戻せていないキサマとが互角に戦えている段階で、答えは見えて居るだろう?」

 かなり余裕を感じさせる、しかし、内容に関しては余裕を感じさせない答えを返して来た。

 その瞬間!

 再び、紅蓮の炎の塊が雲の上に存在するラーフへと次々と命中。
 そう。有希から罠の準備が完了した報せが【指向性の念話】で届くのと、ラーフが火炎弾で襲われるのは、ほぼ同時で有った。

【俺は、一気に三か所までなら、同時に攻撃出来る。せやから、ラーフが罠に掛かった瞬間、左右の琵琶骨と、アイツのノドを傷付ける。その瞬間に、有希は其処に針を転移させてくれ】

 有希に作戦の最後の部分を【念話】にて告げる俺。これは所謂、三段突きと言われる技。
 今回は手首の捻りを入れない予定ですから、普段よりは幾分殺傷能力には欠けるとは思いますが、その分、攻撃の精確さとスピードは十分な物が得られるはずです。

 しかし、と言うべきなのか、それとも、矢張りと表現すべきか。
 次々と線を引くように命中し続けた火界呪も、ヤツが纏う精霊の護りを破る事すら出来なかった。

 そう。相変わらず雲の上に立ち続け、地上を凄まじい。一睨みされただけで、並みの人間――いや、下級の道士でさえも気死しかねない魔力が籠められている瞳で見つめる。
 そして、

「チッ。そう言えば、女も一緒に居たな」

 ラーフがそう言いながら、今度は左腕の方を小五月蠅げに振るった。
 これは、明らかに不機嫌な雰囲気。おそらく、俺との戦いの邪魔をした蠅を手で追い払うと言う程度の気分なのでしょう。

 そうして、

「女、そいつの相手でもしていろ!」

 吐き捨てるように、そう叫ぶラーフ。
 その瞬間、ヤツの左腕に装備されていた腕輪が
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