第29話 黒の破壊神
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ぞっとする嗤いを、その口の端に浮かべながら……。
「取り敢えず、誉めてくれてありがとさん、と答えたら良いのかな?」
【罠の形は、晴明桔梗。おそらく、それがヤツに一番効果を発揮する】
ラーフの言葉には、俺的には爽やかなアイドル系の笑顔プラス実際の言葉で応じ、有希に対しては【指向性の念話】で次の依頼を行った。
そう。この戦いの主は、最初のこちらからの攻撃が無効にされた段階で、有希に移って居ますから。
そして、俺に出来るのは……。
俺の事を炯々と輝く青の瞳で見つめながら、まるで血に飢えた猛獣の如き仕草でベロリと自らのくちびるを湿らせる破壊神の意識を、俺の方に向けさせる事だけ。
【口訣、導引共に火界呪と同じ。重要なのはその呪符の配置。
この順番を間違ったら、そもそも術が発動しない】
俺は、更に【念話】にて有希に対する依頼を行いながら、同時に右腕を軽く一閃。
次の刹那。何も無かったはずの空間から顕われ出でる蒼白き光輝。
その光輝が俺の右腕の動きに合わせて光の軌跡を空中に描き出し――
俺の右手に鎮護国家、破邪顕正を示す黒き鞘に納まった七星の宝刀が顕われていた。
その一部始終を見終えたラーフが、先ほどと同じような無造作な仕草で、こちらも右腕を一閃。
次の瞬間、ラーフの右手には、ヤツに相応しい黒を基調とした一振りの偃月刀が握られていた。
「やれやれ。少しぐらい手を抜いてくれたとしても、おそらく罰は当たらんと思うんやけどな」
黒曜石の輝きを放つ偃月刀……伝説上の破壊神ラーフが手にすると言う裏旋刃を見つめながら、そう軽い調子で台詞を口にする俺。
但し、伝説に残るあの偃月刀の一撃を真面に貰えば、俺は間違いなくこの世から消滅する。それぐらい剣呑な武器だったと思います。
伝説に名を残す裏旋刃と言う武器は。
「刀使いのキサマが愛刀を出した以上、オレの方も出さなければ、勝機は掴めないだろう?」
しかし、どうやら前回の戦いの結果、前世の俺に敗れ封印されていた破壊神が、俺自身も知らないような情報の暴露を行った。
成るほど。
伝承に有った一目連は片目の龍神の事だと思って居たのです、今のヤツの台詞から天目一個神の可能性も有り、と言う事ですか。
そんな、今考える必要のない、クダラナイ考えが頭を過ぎった刹那。
一瞬の隙を見逃す事もなく、再びラーフから黒い針が放たれた。
黒き奔流と化した無数の針。そのひとつひとつに必殺の力が籠められ、すべてが何処かしら俺の弱点。経絡を封じる点を目指して飛来する!
有希は――
問題なし。この黒き死の流れとは違う角度の先に存在し、更に、既に回避行動に移っている。
それならば!
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