第29話 黒の破壊神
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て来るラーフ!
但し、そんな攻撃など、元々、想定の内!
大地に手を付いたのは何も足払いを行う為だけの物ではない。左腕を軸に足払いの遠心力を利用して片手で逆立ちを行う要領で大地から跳ね上がり、同時に更に身体を捻る事に因って、上空から迫り来るラーフの蹴りを躱しながら、こちらの逆立ち状態から放たれた回し蹴りがヤツの頭部を完全に捉えた。
今、俺の姿を傍から見ると、逆立ちをして両足を開いた状態で回転する独楽状態。
そう。この攻撃の方がむしろ本命。完全に勢いを付け、更に、防御に回すべき精霊力もすべて攻撃に回した渾身の一撃がラーフを完全に捉えたのだ!
普通の人間なら頭部が簡単に血煙に変わる威力の蹴りを側頭部に真面に食らったラーフが吹っ飛ばされ、そのまま校庭の隅に有る野球用のバックネットを完全に破壊。土煙の向こう側に姿を消す。
完全に視界が土煙に閉ざされ、一瞬の空白。
しかし……。
「……やれやれ。せっかくの太上老君製の霊験あらたかな有り難い宝貝やのに、そないに簡単に無効化されると、かなりへこむんやけどね」
完全に破壊され、未だ土煙に覆われたバックネット裏に向け、そう言葉を投げ掛ける俺。
但し、余裕のある口振りに反して、その頬からは深く切り裂かれた傷痕から生命の源が流れ出し、安物のトレーナーに紅い彩を付けて行く。
この傷痕は、完全にヤツの攻撃を躱した心算でしたが、風圧だけで簡単に頬を切り裂かれて居たと言う事。
それも、俺自身が従えて居る精霊の護りを貫いた上で。
これは、早い内に勝負を決めなければ、コチラの方がじり貧に成って行く一方で、勝機など訪れる事はない、と言う事なのでしょうね。
まして、治癒魔法を施す余裕は有りませんし。
何故ならば、未だヤツの神力は衰える事を知らず、そちらの方向からビンビンと伝わって来て居ましたから。
そして、
【有希。火界呪符で援護しつつ、罠……疾風呪符、石弾呪符、火界呪符の順番に重ねた呪符の束を五つ以上。出来るだけ作って、ヤツを追い込む先に仕込んで置いてくれ】
最悪の想定の為に用意して置いたシナリオを進める依頼を、【指向性の念話】で有希に対して行う俺。
そう。既に事態は最悪。老君作製の宝貝が真面な方法では機能しない。有希の放った火界呪符も効果なし。物理反射で反射されたヤツ自身の黒い針も、そして自ら放って来た雷撃を反射されても無傷。
そうして……。
ゆっくりと晴れて行く土煙。
その向こう側に立つ黒い――――
「相変わらず、小細工だけは得意なようだな」
自らの放った雷光をマトモに返され、更に、俺の渾身の蹴りをその頭部に受けてもまったくダメージを受けた様子も見せずに、伝説の破壊神は俺に対してそう話し掛けて来た。
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