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ヴァレンタインから一週間
第29話 黒の破壊神
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 煌々と照らし続ける蒼き月が支配する静寂の世界。

 正面に見える校舎は夜の闇に沈み、
 周囲からは生命体が存在する気配すら感じられる事もない。

 そう。世界にあまねく存在し、異界化した空間で有ろうとも確実に存在しているはずの精霊たちですら、じっとその気配を消し、この出会いの結末を見守ろうとしているかのようで有った。

 異界化した世界の中心。東中学のグラウンドの更に中心に存在する長身の黒い影。
 まるで闇と同化したような自然な雰囲気で立つその黒い(おとこ)の前、大体二十メートルほどの距離を置いて立ち止まった俺と有希。

 その瞬間、

「いい夜だな」

 彼の見た目に相応しいややぞんざいな。そして、男性の魅力に溢れた低い声音でそう問い掛けて来る。
 何故だか、思わず微笑みを返しそうになる、野生的な漢の笑みと共に……。

 いや、黒い漢、……と表現はしましたが、現在の時間帯から考えると、彼の肌の色は赤銅色と表現すべきですか。そして髪はぼざぼざで手入れが一切されていない長い黒髪。
 黒い……最早、服とは呼べないような襤褸切れを纏う長身痩躯の影。しかし、間違ってもみすぼらしいとは表現出来ない雰囲気。

 そう。つい最近まで、何処かの前近代的な牢獄に閉じ込められていたとするならば、この目の前の漢のように成るのではないかと想像出来る姿。

「久しぶり、でええんかいな」

 何となく、誘惑に勝てなかった俺が、その黒い男に敢えて再会の挨拶を行って見る。
 その俺の口元を吐息が白くけぶらせた。

 その瞬間、目の前の黒い男が話し掛けて来た時には、ヤツの吐息が凍る事が無かった事が、今更ながらに確認出来たのでした。
 この目の前の男が人ならざる存在で有る、と言う事実を……。

「なんだ、キサマ。覚えていないのか?」

 爛々と輝く青い瞳を少し驚いた雰囲気で見開き、そう俺に問い返して来る黒き漢。
 暗闇に有って尚、その顔が西洋風の面差しの野性的な、……と表現すべき造作で有る事は見て取れる。
 そして、全体的にやや細見と言うべき身体付きながらも、良く鍛えられた高密度の筋肉に因って守られている引き締まった身体。

「そうか、それはすまなんだな」

 まるで、本当に昔の仲の良かった友人に対して謝るような軽い調子で答えを返す俺。

 それに、どうやら以前の封印。西宮に残された伝承に関わったのも、俺の過去世か、それとも異世界同位体の仕事だったらしいと言う事が、今のヤツの答えで判りましたから。
 そしてその部分が、俺がこの世界に呼び戻された理由だと言う事なのでしょう。

 但し、転生前の俺が納得して為された事だったとしても、少し恨み言のひとつも言いたくなるのは事実なのですが。
 他の誰でもない、転
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