第六十話
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になっていただろうが、ここ《ミスマルカ》ではそんなことはない。来るもの拒まずということのような、全ての種族が笑い合っていることこそが、このミスマルカというレプラコーンの首都の色なのだろう。
「おい、そこのシルフの坊ちゃん!」
良い所だな、などと思っていたのも束の間、あまり呼んで欲しくない呼び方で声をかけられた。確かに今の俺の外見は、貴族のお坊ちゃんみたいな感じなのだが、髪の色だけでも変えられないだろうか。
「……ん?」
「よう、坊ちゃん。ちょっとやっていかねーかい?」
いかにも鍛冶屋という巨漢のレプラコーンが、自分の背後を指差しながらそう言った。そこでは、二人のプレイヤーが俺にも馴染み深い《鍛冶》を行って、武器を造っているようだ。
「なにやってるんだ?」
「コンテストさぁ。前回の優勝者と飛び入り参加のダークホースの決勝戦。一口200コルから、どうだ?」
鍛冶を使ってコンテストということは、プレイヤーのどちらが良い武器を造れるか、という戦いだろうか。……そしてこのレプラコーンがやっているのは、こういう大会にはお決まりのトトカルチョのようなものだろう。
通りでコンテストを行っている周りにたむろしている連中に、奇妙な熱気のようなものが漂っているのはこのためだろう。
「……止めとくよ」
こういう賭けは雰囲気はともかくあまり好きではないし、そもそも俺には一銭もない。そういう訳で丁重にお断りさせて頂くと、レプラコーンは隠す気もなく舌打ちした。
「チッ、見た目通りのお坊ちゃんかよ……おーい!」
すごすごと引き返したかと思えば、即座に他のプレイヤー達へと賭の勧誘に行くレプラコーンに、俺はなかなかの強かさを感じるのだった。そして前述の通り賭けには興味がないものの、どんな武器が出来るかという、このコンテストの結果には興味がある。
どうせ行く当ても無し、その場に立ち止まって見ることにしよう。
二人のレプラコーンの、ハンマーを打ちつける規則正しく懐かしい音がしばらく響いていたが、しばし後に片方の音が止まる。先程優勝候補だと紹介された、無精ひげを生やしたいかにも職人、という出で立ちのプレイヤーである。
そのレプラコーンがハンマーで叩いていた金属片を持ち上げると、レプラコーンの手の上でその金属が変容していく。変容しているインゴットがその形を成していくと、どのような方法を使ったのかは知る由もないが、奇妙な紋様が刻まれている赤銅色のハンマーが出来上がっていた。
「おお……!」
その見るからに頑強そうなハンマーを見て、俺を含む観客が息を呑んだが、レプラコーンの職人はそれを片手で制した後、ハンマーを振り上げ……ハンマーを作っていた机に思いっきり叩きつけた。
…
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