第三十七話 救済
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あの直後、カストロプ公、ノイケルン宮内尚書、カルテナー侍従次長が処分されている。正当な理由あっての事だが多くの貴族達は政府を怖れ始めているのだ。それなのに制限の解除? シュトライト少将もアンスバッハ准将も表情には出さないが呆れているのが分かった。
「まず理由を聞こうか。それなしでは良いとも悪いとも言い様が無い」
「……それは……」
「それは? 如何したのだ、ハルツ男爵、ヴォルフスブルク子爵」
ブラウンシュバイク大公が口籠った二人に先を促した。大体想像は付く、大公とエーリッヒも分かっているはずだ。
「借金が有るのです。お恥ずかしい限りですが今のままでは返済できません」
ハルツ男爵の返答に大公とエーリッヒが顔を見合わせた。二人の表情に驚きは無い、やはり想定内という事だろう。
「どれほどの金額なのです」
エーリッヒが質すと二人がバツの悪そうな表情をした。かなりの高額らしい。
「私は五千万帝国マルク程です。ヴォルフスブルク子爵は約一億帝国マルク……」
億を超える借金? 一体何をやった、こいつら。余程の事が無ければそこまではいかない。大公は平然としているがエーリッヒは間違いなく吃驚している。そうだよな、平民出身のエーリッヒには想像もつかないだろう。
「しかし、それでは猶予と言ってもかなりの長期になるのではありませんか」
「そうだな、……返済期限を延ばして貰い度々の支払い金額を減じて貰ってはどうだ。利息は増えるかもしれんがそれなら税に制限をかけても何とかなろう」
エーリッヒと大公が問い掛けると二人が項垂れた。
「もう、ずっと返済を滞らせているのです」
ヴォルフスブルク子爵の言葉に一瞬だが応接室に異様な沈黙が落ちた。大公の表情が厳しくなった。
「早急に支払う必要が有るという事か。……卿ら、借金は総額で幾ら有るのだ?」
二人が顔を見合わせた。そしてハルツ男爵が答えた。
「私は五億帝国マルク程です。ヴォルフスブルク子爵は約十億帝国マルク……」
エーリッヒが溜息を吐いた。気持ちは分かる、俺も溜息を吐きたい。平然としている大公の方が異常だ。
「それでは無理だな。税率を制限せずとも借金を返すのはかなり難しかろう」
「……」
同感だ、金額から考えてこの二人はかなり無理をして借金をしている。となれば借金の金利も低くはない筈だ。おそらく両家の内実は火の車だっただろう。大公が太い息を吐いた。
「あとは当家が借金を肩代わりするくらいしかあるまい」
ハルツ男爵とヴォルフスブルク子爵の顔に安堵の色が浮かんだ。この二人、最初からそれが狙いか。まあ一門の総帥としてはそうするしかないのも事実だ。そしてそれが可能なだけの財力がブラウンシュバイク公爵家にはある。この二人が心配したのはエーリッヒが自分達を切り捨てるのではないかという
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