第三十七話 救済
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笑が止まらない。
「大佐の事はフェザーン商人に頼みましょう。費用はこちらで持ちます。それと大佐がハイネセンで不自由しないようにその分のお金も用意します」
「それは有難いですな」
「言ったでしょう、私は親切なのです」
その後、大まかな段取りをした。ハイネセンへの航海はブラウンシュバイク公爵家に出入りのフェザーン商人に頼む事になった。俺の立場は捕虜では無くブラウンシュバイク公爵からの預かり人という事になるらしい。その商人がオーディンに来るまで一カ月ほど有るそうだ。ハイネセンで二カ月か、結構時間が有るな、リンツ、ブルームハルト達の家族にも会えるだけの時間は有る……。
さて、どうするかな。もし向こうで部下達が不当な待遇を受けているなら、俺が真実を告げても彼らの待遇が変わらないなら……。難しい選択を迫られることになるかもしれない……。
帝国暦487年 11月 15日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 アントン・フェルナー
ブラウンシュバイク公爵邸の応接室には四人の貴族が座っている。ブラウンシュバイク大公、ブラウンシュバイク公親子。髪の毛の薄いハルツ男爵、背の高い痩身のヴォルフスブルク子爵。そして俺とシュトライト少将、アンスバッハ准将が立ち会っているのだが応接室には何とも言えない空気が漂っている。
「それで私達に相談とは一体なんでしょう?」
エーリッヒが問い掛けたがハルツ男爵、ヴォルフスブルク子爵は頻りに額の汗を拭うばかりだ。その姿を見てエーリッヒが大公と顔を見合わせた。二人とも困惑と不審を顔に浮かべている。確かに妙だ、客人達はこの屋敷に来た時から異様に緊張している。
「ハルツ男爵、ヴォルフスブルク子爵、黙っていては分からぬ。相談が有るから此処に来たのであろう、何か困った事でもあるのかな、当家で力になれる事なら助力は惜しまぬが」
大公の言葉に二人が顔を見合わせた。そしておずおずとヴォルフスブルク子爵が話し始めた。
「実は先日発表された税の制限の事ですが……」
言葉が途切れた。そしてハルツ男爵と顔を見合す。今度はハルツ男爵が同じようにおずおずと話しだした。
「その制限を解除して頂く訳にはいきますまいか」
ブラウンシュバイク大公とエーリッヒが顔を見合わせると二人は慌てたように
「私もハルツ男爵も決して政府の意向に逆らうというわけではありません」
「ただ、暫くの間猶予を頂きたいと思います。御二方から政府にお願いして頂きたいのです」
と言った。話し終えて二人はおどおどと大公とエーリッヒを見ている。
それにしても税の制限の解除? 一体この二人は何を考えているのか。黒真珠の間で、皇帝御臨席の場で発表された事だぞ。それを待て? 自分達だけ特別扱いしろ? とても正気とは思えない。
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