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アマガミフェイト・ZERO
〈……一方その頃〉
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は飽きたらず、異界より良からぬものをも呼びだしたか」
「そのようでございます。報告によると、屋敷内に巣食っているのは、無数の手足を持った面妖な怪物のようです」
「て、手足が、た、沢山っ!?」
 紗江が口元を押さえる。見れば、顔も既に青くなってきている。
 門の上のアーチャ―も、顔をしかめた。
 綺礼が、紗江を手招きした。
「あの喫茶店で働くのでしょう? 店員としてお店に出れば、何があるか解りません。困難にひるまないよう精神を鍛えるのです」
 恐怖におびえる紗江の眼には、涙すら浮かんでいる。だが、ぎゅっと小さくて愛らしい拳を紗江が握り締めた。
「そ、そうですよね。わ、私、がんばります、教官!」
 震えながらも気力を振り絞る様を見て、言峰の心は満たされていった。

 門をくぐると、闇がより一層深まったように感じた。言峰は、油断なく周囲に注意を払う。背後に、怯える紗江の息遣いを感じた。
(少女を守るというのも、実に甘美だ)
 声無く笑いながら言峰は、足を進める。石造りの舗装された通路の先に、古めかしい引き扉の玄関がある。扉に手をかけ、ゆっくりと開いた。
「……ッ!」
 暗黒の室内から、四、五本の黒い蔦が伸び、言峰に襲いかかった。人の腕程もある黒い蔦を、言峰は素早く拳で打ち払う。
「い、いやぁぁぁぁ」
 言峰が振り返り、怯える紗江を片手で抱きかかえる。そして常人で四歩程の距離をたった一歩で飛び、玄関から距離をとる。言峰が八極拳の達人だからこそ、成せた技だ。言峰が鋭い視線を玄関に向ける。
「やはり、異界の怪物に屋敷を守らせていたのだな」
ゆっくりと玄関が開いていき、大人くらいの大きさの真っ黒い塊が、屋敷の中から現れた。塊からは、先ほど言峰が弾いた太い蔦が九、十本くらい生えていた。
「イカーーーーッカッカッカッカ! この俺様を倒さなければ、ここから先は、イカせられないなぁ」
 外へ出でた黒い塊を、魔光に漲る月が照らす。黒々とした、二mはあろうかという巨体。蠢く巨大な十本の異形の腕。双眸は血に飢えるように赤々と輝く。まるで深海に潜む悪夢の化身。巨大イカの大怪人が、月下に姿を現した。
「この地には、恨みとイカりが満ち溢れている。イナゴマスクによって葬られた、怪人達の怨念よ、我が身に力を漲らせ給え。イィカァァァァァァァッ!」
 大地から、紫の妖しげな燐光を放つ黒い煙が、浪々と立ち上る。イカの大怪人が煙をその身にどんどん取り込んでいく。
「我が名は、超イカ男! 真なる地獄を、味あわせてやろうじゃなイカッ」
「王の道を汚物で汚すか。不敬も甚だしいぞ!」
 門の上に立つアーチャ―が怒りを顔面に表す。黄金の英雄王の背後が、不自然に波打ち始め、光りと共に槍や剣、斧など数多の武器が現れた。
「もはや一族皆死罪でもその罪、拭いきれぬ。
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