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戦場のヴァルキュリア 第二次ガリア戦役黙秘録
第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
鋼の戦乙女
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「おう、お疲れさん。いきなりキツい仕事になっちまったな」

 ファウゼン基地の士官室でアンリは電話でランドグリーズのクロウに任務完了の報告をする。列車砲ヘルヴォルは検分の後にガリア軍の兵器としてランドグリーズに移されることとなったなどの連絡を受け、今は軽い雑談中だ。雑談の雰囲気なのはクロウだけだが。

「は。最前線に比べれば、これしきで泣き言を言えません」

「そうかい……ヴェアヴォルフはどうだ? 大陸でも選りすぐりの連中だ。正規軍に比べりゃ上等だろ?」

「はい。練度も高く、士気も高いので作戦行動が進めやすいのですが、やはり民間人が多すぎて、難点もあります」

「そりゃそうだ。まぁ、俺さんも言い出しっぺだし、サポートくらいはしてやるよ。コーデリア陛下から許しを得て、お前さんに現地徴用許可をやる。これで人手不足は何とかなんだろ」

「感謝します少将」

 電話に向かってアンリは礼をしたが、クロウに伝わるはずはない。

「人探しの手間が省けんだ。感謝すんのは俺さんさ。何はともあれ、よくやった。ランドグリーズに戻ったらしばらく休め。そんじゃあな」

 それだけ残して通話が途絶える。残されたアンリはチェアに腰掛け、息をつく。ヴェアヴォルフ隊は練度こそ高いが、個人が自分の能力を把握できていない。ただ身体能力の高さに任せているだけだ。銃撃戦でもかなり着弾率がまばらで、ネレイやアンドレはまともに突撃銃を撃てていない。
 アンリのように火器を扱いなれた人間は数少ない。本人の身体能力や性格、嗜好が銃の得手不得手を決めるのだから、まんべんなく扱える方が珍しい。前任者がそのことを考えていたかは不明だが、少なくとも改革の前に倒れたのは確かだ。この仕事はアンリに託された課題と言うべきだ。

「……苦労が絶えないな。やりごたえはあるんだが……」

 アンリ以外に誰もいない部屋は静かに西陽に照らされ赤く輝いている。その光は神々しさを感じさせる。窓の外で佇む轟音の戦乙女《ヘルヴォル》に僅かな達成感を覚え、アンリは瞳を閉じた。
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