第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
鋼の戦乙女
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ここからファウゼンまではどのくらいだ?」
「近からず遠からずってとこよ。高架は過ぎたし、そろそろ射程距離じゃない?」
「そうだね。多少はズレるかもしれないけど、爆風でファウゼン攻略部隊は大打撃なんじゃないかな?」
「失礼……すでに射程距離、なんですか?」
エルンストは驚いた拍子にズレた眼鏡の位置を直しながらノーデス姉弟に尋ねた。列車砲は陸戦兵器において初期型の自走臼砲と同等の射程距離を持つが、高架を過ぎてすぐの場所からファウゼンは並みの砲撃で届く距離ではない。あくまでも、鉄道ならすぐに着く距離も数値で見ればかなりのものである。しかし、この巨大列車砲はその超長距離を攻撃可能なのだ。エルンストの驚きも無理はない。
「おっそろしいねぇ……コイツが敵さんとしてファウゼンに来てりゃ、確実に|陥落《
お》とされてたな」
「強奪命令が出るのも当然ですね。こんなので攻撃されたら味方の被害もちょっとやそっとじゃ済みませんから……」
「届くならすぐに使おう。リジィ、グイン、砲撃用意を」
「任せておきなさい。馬鹿な帝国軍を塵芥にしてやるわ」
「次弾装填に時間がかかるので、その間は警備をお願いします……ヘルヴォルには対空の機関銃座があるのでそれを使って下さい」
「歩哨の順番で交代していこう」
装填を開始したヘルヴォルの防衛のため、アンリは隊員を連れて銃座に向かう。増援は考えにくいが、もしもがあっては困るからだ。銃座の硬い席で第一弾の装填完了のアナウンスを聞いたアンリは、部隊の欠点を洗い出していた。それに意識を割いていたせいで、砲撃の秒読みを聞き逃してしまった。
「………2、1……発射!」
「!!」
慌てて耳を手で覆い爆音に備える。
―――ゴゥゥゥゥゥゥン!!―――
地震かと勘違いしそうな衝撃と、雷のような発射音が列車を襲う。複線にしなければならないほど大きなだけはあり、間を空けて着弾時の地震で微かに列車が震えた。次弾装填のアナウンスが放送される前に、マルティンから通信が入る。
「あー……隊長、聞こえてるかい?」
「何とかな。どうした?」
「マジノ線に集結していたファウゼン攻略部隊が、爆発で消滅したらしい。それと基地の周辺で地震も確認された」
「……そうか。ありがとう。みんな、任務完了だ。ファウゼン基地の防衛は成功した。これよりファウゼンに向かいクロウ少将に報告する」
イヤホン越しにマルティンの歓喜の声が届く。アンリも今まで率いた部隊でも、これほど任務の成功に喜びを感じたのは初めてのことである。
列車はゆっくりと前進しラグナイト鉱山を目指す。
以前までには抱いたことのない達成感を噛み締めつつ、アンリは深々と椅子にもたれた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ