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戦場のヴァルキュリア 第二次ガリア戦役黙秘録
第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
鋼の戦乙女
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 悪い話でもあるまい」

「ガイウス! 敵の車両を吹き飛ばせ!」

「そうこなくちゃ、俺たちのボスじゃねぇな」

 
 インカムに指示を出し、イヤホンからおどけた様子で応答があった。その直後に75oカノン砲が火を吹いた。既に装甲をほとんど失っていた貨車に砲弾が直撃し、薄い鉄板の壁は内側から粉砕される。連結部が破壊されたらしく、カノン砲や歩兵を載せた車両が遠ざかっていく。

「高架まであと少しよ! 踏ん張りなさい!」

「待て! この先にある高架は何十年も前の木造だ! 俺たちと帝国が乗り込んだら確実に崖下へ落っこちる!」

「どうすんだ隊長!? こんなバケモノと崖の下でオネンネなんざ嫌だぜ!?」

「よし、帝国の動力車を乗っ取るぞ」

「「「はぁ!?」」」

「驚いている暇はないぞ。突撃兵と機関銃兵は全員あちらに移れ!」

 アンリの命令に応じて女性たちは次々にシャミャウィへ移動した。歩兵車両を失っても僅かに戦力を残していたらしく、散発的に抵抗がある。だらだらと続く銃撃戦に真っ先に痺れを切らしたのはアンリだった。腰に提げた手榴弾を全て通路に投げ込んだのだ。大爆発の衝撃が駆け抜けると、Ruhm-MPを構えて煙の中へ掃射する。

「恐れるな! 突撃ィーッ!」

「「了解!!」」

「なっ、何だ!? 女が突撃してきたぞ!」

「ガリアの黒服部隊だ! 俺は死にたくないから逃げるァァァァーっ!!」

 鬼気迫るアンリたちの死に物狂いの突撃には圧倒的な勢いがあった。数的不利を目の当たりにした帝国軍兵士たちはその覇気に飲まれ、戦意を喪失、遁走する。その大半は車両から転落して車輪に巻き込まれるか、硬い地面に叩きつけられるだけだが。

「走れ! 逃げない兵士は全て排除しろ!」

 狼狽える者も何もかも見境なく撃ち抜きながら一行は先頭車輪に雪崩れ込む。そこは愛想のないディーゼルの運転室で、指揮官とおぼしき士官服の男と数名の操縦士がいるのみだった。指揮官は拳銃を構えてアンリの眉間に照準を合わせる。

「銃を捨てぇっ――」

「武器を破棄しない者、後方車両に移らない者は敵とみなし射殺する」

 言い終わるより速く、指揮官はネレイのVR-S05突撃銃によって蜂の巣に変えられた。アンリは操縦士を脅して操縦席から離れさせる。 全員がナイフや拳銃を床に置いて逃げ出したのを確認すると、操作基盤の自爆装置を起動させる。帝国の機動兵器には機密保持のため自爆装置が取り付けられている。指揮官のペンダントに隠されていたキーを奪いカウントを始動させたアンリたちは急いで『ヘルヴォル』まで戻る。客車まで辿り着く頃には動力車が内部から火を吹き始め、動力を失っていた。
 高架を渡りきるとヴェアヴォルフは休息に入っていた。


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