第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
鋼の戦乙女
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悶えるロッシュに水を差し出したのはマルティンだった。ナツメグソウの新芽は果肉に回る数倍の辛味成分が濃縮されている。普通は乾燥させてから粉末にするのだが、ヒルデは味消しに使っていたようだ。図らずともロッシュの一人コントはウケた。笑いが起きる中、車内放送で見張りを買って出たフィオネから報告があった。
「隊長! スメイク方面から帝国の装甲列車が!」
「カノン砲で先制攻撃しろ。 先に見舞って気勢を削ぐんだ。 各員、敵車両を撃破する。存分に暴れてやれ!」
「「「了解!!!」」」
簡易のテーブルや座席に置いた武器を手に取り、隊員たちは次々に後方の装甲列車へ移る。アンリもRuhmの量産型である機関銃を手にして後方へ走る。装甲列車はあくまでもライフル以下の火器を無力化するだけであり、対戦車槍までは防げない。男性陣は対戦車槍を持ち出した。女性陣は突撃銃や小銃を装備して敵歩兵に備える。迫り来る赤と黒の迷彩塗装を施された帝国軍の列車に、『ヴェアヴォルフ』の先制攻撃が炸裂する。中程の有蓋車の側面が吹き飛び、そこから突撃銃と機関銃の一斉射撃が始まる。
「ガイウスはカサブランカの主砲で相手のカノン砲と機関砲を排除しろ! 対戦車槍は車輪を狙え! 弾薬は惜しみ無く使ってくれ!」
「隊長さんに言われなくてもそうするさ!」
帝国軍の列車はカサブランカの主砲とカノン砲の集中砲火で固定装備の大半を喪失する。しかし退く様子はなく、むしろ速度を上げている。銃撃戦は激しさを増し、帝国軍は固定式の多銃身砲まで引っ張り出していた。古いタイプだが、対人戦では未だに絶大な威力を誇る兵器だ。
「あんな骨董品まで現役とは、帝国は武器が足りないようですね」
「まったくだ……。残るのは歩兵だけか?」
「敵装甲列車の火砲は無力化に成功しています!」
「総員、客車まで退くぞ。そこでしらみ潰しにしてやる」
帝国軍は車両と車両の間に足場を設け、そこから続々と牽引車を目指して殺到する。しかし客車に陣取ったアンリたちの形成する弾幕に阻まれ、そこからは数と時間の勝負となる。
「高架を過ぎたら我々の勝ちだ、持ちこたえろ!」
「させるか、このガリア野郎!」
「婦人に野郎はないだろお前」
マルティンの持つ帝国の小銃が仮面とヘルメットに覆われた帝国軍歩兵の額を撃ち抜く。連結部の柵を乗り越えて線路に転落した亡骸は車両に轢かれて無惨に潰れる。何人退けても攻勢は衰えず、次第にヴェアヴォルフは疲弊していく。そこへ装甲列車シャミャウィから呼び掛けがあった。敵の隊長と思わしき男がまくしたてる。
「ガリア軍の諸君。我が部隊はその列車砲さえ取り戻せたらいい……そこで提案だ。君たちは列車砲を引き渡し、我々はそちらを見逃す。どうだね?
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