第1部 甦る英雄の影
第1章 人狼部隊
鋼の戦乙女
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先頭を走る高速機関車、兵士が乗った客車、物資を詰め込んだ貨車、戦車を積載した台車の後ろにそびえる巨大列車砲が続く。試射では都市区画1つ消し飛ばすことが可能とされる反面、牽引には専用の機関車を必要とし、その巨大さから複線でなければならないなどハンデも多い。
リディツェ村を出たヴェアヴォルフ隊は、ひたすら一直線にファウゼン防衛の要であるマジノ線を目指す。20年の間にレールの幅を帝国と同じにしたため、再敷設の苦労もなく移動はスムーズだ。
「マジノ線突破部隊の後方に配置された司令部を列車砲で攻撃しよう。支援してもらうはずが攻撃されるなんて、思いもしないだろうからな」
「それまで敵さんが来ない保証もないけどよ、まぁ心配はないんじゃないか?」
「以外に早いですからね、この列車。それでも普通の装甲列車より遥かに遅いんですけど」
「そりゃあ仕方ないさ姉さん。あんな大物をエスコートするんだからな」
客車に機関銃を取り付けた武装車両はベーメン・レーメンとファウゼンの境に近づき、緑豊かな平原から次第に岩肌剥き出しの荒れ地に入る。予定時刻よりやや遅れ、既に日は高い。
「不味いな。このままだと帝国が追撃部隊を寄越す可能性もある。何事もないといいが」
「何事もないよか、この飯だ飯! 不味くて仕方ねぇ!」
「ギュスパーさん、帝国のレーションに比べればまだマシです。不味いのは否定しませんけど……」
見張り以外は客車にてレーションの缶詰を口に捩じ込む。その粗悪な味と風味は食事にあるまじき大雑把さと食感の悪さに集約される。水気のない肉と塩辛く脂っこいスープにネレイは顔をしかめる。マルギットもあまり晴れやかではない。
流れる景色は土気色、空の雲は鈍く重苦しい。和気藹々の列車旅とは言い難く、ぬるい水で野戦食を流し込む苦行に『ヴェアヴォルフ』のメンバーはことごとく嫌気が差していた。不味い食事というのは、それだけで空気を悪くするものなのだ。どんよりとした客車には、いつもの騒がしさがない。ピリピリとした、攻撃性を何とかして隠し通そうとしている嫌な気配で満ち溢れていた。
不満一つ漏らさずに肉を食べているのは、野草を盛り付けたヒルデと、何故か満足げなアンドレだけだ。ヒルデが座る車両最後尾の席には多数の小瓶が並び、中には様々な木の実や葉っぱ、花弁が詰まっていた。それを目ざとく見つけたロッシュは隣に座る。
「なぁヒルデ、その葉っぱとか花びらって旨いのか?」
「…………」
ヒルデは無言で数ある葉っぱの一つをロッシュの缶詰めに乗せた。濃い緑色の葉に赤い葉脈が浮かんだ、ナツメソウの新芽だ。
「お、サンキュー。じゃあ一口…………………………辛
かっれ
ぇ!! 口が痛い!!」
「………………」
口を抑えて
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