第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十九 〜会見〜
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頃。
馬蹄の音が、響き始めた。
城外に出ていた皇甫嵩の軍が、戻ってきたようだ。
「存外、早かったようだな」
「装備の割に糧秣をほとんど持って出てませんからねー。調練だったのでは?」
「確かに、切迫した様子がありませんでしたしね」
ほう、そう見ていたか。
だが、二人の言う通りかも知れぬな。
それだけ、官軍にも余裕が出てきた、そう見るべきか。
「主。誰ぞ、此方に向かってくるようですぞ?」
「確かに。……将のようですが」
ふむ、皇甫嵩が既に誰何した後なのだが。
「土方はいるか?」
この声……聞き覚えがある。
「貴殿は……朱儁将軍でござるな?」
「如何にも。久しいな」
「何故、此処に? 未だ黄巾党征伐の最中、と聞いておりましたが」
「その話は後ほど。私と一緒に、来て貰いたい」
朱儁は、声を潜めて言う。
「拙者、でござるか?」
「他にはおらんだろう。時間がないのだ、徐晃も共に来い」
「わかりました。歳三殿、参りましょう」
急な話だが、疾風が一緒ならば心配無用だろう。
「……では、お供致しましょう。稟、風、星。留守を頼む」
「はい」
「了解ですー」
「はっ」
朱儁に連れられ、洛陽に入る。
旗や装備を見る限り、同行しているのは皇甫嵩の軍で間違いないようだが……。
朱儁は私を軍に紛れ込ませた後、すぐに何処かに姿を消した。
「疾風。これも、手筈通りなのか?」
「……いえ。ですが、今は進むより他にないかと」
「そうだな」
思い直して、辺りを眺めてみる。
明かりも殆どなく、人の往来もない。
今少し、夜とは言え活気があるかと思っていたのだが……。
「思いの外、静かだな」
晋陽や北平のような地方都市とは違い、此処は仮にも都の筈。
よく見ると、何かが蠢いているようだが。
「行く宛のない流民ですよ」
「流民?」
「そうです。干魃や蝗の被害で税が払えなくなり、職を求めて洛陽に出てきた民達です。洛陽に行けばどうにかなる、と」
「だが、期待していた都の姿ではなく。食いつめてしまった……そういう訳か」
「そうです。洛陽に元より住む民でさえ、日々の暮らしに困る有り様。流民を受け入れる余裕などある筈もございませぬ」
あの荘厳な宮城の中には、美食美酒で過ごす輩がいる事を、彼らは知っているのだろうか。
尤も、宮中で自らを高貴と考えている連中に庶人を顧みる甲斐性があったなら、この国はここまで荒廃しておらぬであろうが。
「曹操殿が見ておくといいと言った事の一つは、まさにこれかと。無論、これは氷山の一角に過ぎませぬが」
「国の無為無策に苦しむのは、何時でも民……か」
「願わくば、このような光景……見る機会が稀であると良いのですが」
銅臭政治の結果がこうであると、今上
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