第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十九 〜会見〜
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?」
「……星。昼間からそういう会話はどうかと思いますが?」
「何を言うのだ、稟。お主らはずっと主と一緒ではないか。私だけ、主の愛を久しくいただいておらぬのだぞ?」
「まぁまぁ。星ちゃんの気持ちもわかりますけどねー。でも、今晩は恐らく無理だと思いますよ」
「むぅ、何故ですか、主?」
少しばかり、悄気返る星。
「この場に、疾風がおらぬのが、その訳だ。まだ、結果を待つ最中ではあるが」
何進の許に向かわせた事を、順を追って話した。
……が、理解はしても納得はせず、明後日という約定となった。
本人が切に望むのだ、仕方あるまい。
夕刻。
開かれていた門が閉じる間際になり、人の往来が激しさを増していた。
「只今、戻りました」
人混みに紛れて、疾風が帰還した。
「ご苦労だったな」
「はっ。星、久しいな」
「ああ、疾風こそ。……ふむ」
星は、疾風の顔を覗き込む。
「何だ?」
「……いや、女の色気が出てきた、そう思ってな」
「な、何を申すのだ」
真っ赤になる疾風。
「良いではないか。主のお情けを戴いたのであろう?」
「そ、そうだ! だが、後悔はしていないぞ!」
「ふむ。主、疾風にまで手を出されましたか。この星は、如何すれば宜しいのでしょう?」
「……止さぬか。以前にも申した通りだ、私は言葉を違えるつもりはない」
「はっはっは、それを聞いて安堵しましたぞ。疾風、お主とは、ますます競い合う仲、という訳だ」
「…………」
疾風は、黙ってしまった。
「その話は後に致せ。それよりも、首尾は如何であった?」
「は、はっ。何進殿にお目にかかれ、歳三殿の事を申し上げました。何進殿も、歳三殿の噂を耳にしておいでで、一度話をしたい、との仰せでした」
「そうか。良くやったぞ、疾風」
「いえ。然したる事ではありませぬが」
そう言いながらも、疾風は微笑んだ。
「して、日取りは何と?」
「本来であれば、すぐにでも、とのご意向でしたが。何分、何進殿は身分が身分。宦官の眼もあります故、思うようには参りますまい」
「やむを得ぬだろうな。とは申せ」
私は、天幕の外に眼を遣る。
「兵も、ただ待つのみでは士気に関わろう。城中にて、英気を養わせたい」
「その為には、入城の許可を取り付けなければなりませんが。大将軍では、その権限はありませんね」
「官位さえあれば、何の問題もないのですけどねー。その為には、陛下に拝謁する必要がありますし」
「ままならぬものだな。疾風、何とかならぬのか?」
「星、無理を申すな。この中で、官職を持つのは誰もおらんのだ。私も、官職を捨ててしまっているしな」
「何か、口実があれば良いだが……。ふむ」
これと言って、良き思案は浮かばぬ。
日が沈み、夜の帳が下り始めた
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