第百三十五話 退きの戦その二
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「さもなくば都が危うい、勘十郎達に負担をかける訳にもいかぬ。おそらく」
「おそらくとは」
「勘十郎は既に出ているであろうな」
こう呼んでのことだった。
「三郎五郎と共に二万程率いてな」
「そうしてですか」
「都を空にしておられますか」
「そうして朽木に圧力をかけんとしておるだろう、勘十郎は政を見るからな」
信長もそれは見抜いていた、やはり彼も政に生きる者だからだ。
「そして勘十郎も三郎五郎もわかっているが」
「都を空にするのですな」
「一刻も早くわしが都に戻らねば都がそれだけ空になるということじゃ」
「それがですか」
「都を不安にさせる、さすれば怪しい動きをする者もおるからな」
「では」
「うむ、早く戻らねばならん」
山を超えてでもだというのだ、野盗に襲われる危険を考えながらも。
「何としてもな」
「難しいところですな」
「確かにそうじゃが必ず早く戻る」
信長は意を決している顔で答える、そのうえで都に向かっていた。
その彼の左右には毛利と服部がいて護っている、その後ろから声がしてきた。
「殿!そこでしたか!」
「今来ました!」
慶次と奥村だった、可児もいた。
三人はすぐに信長の周りに来た、そのうえでこう言って来た。
「いや、我等も急ぎましたが」
「ここにおられるとは」
「御主達も来たか」
信長はその慶次と可児を見て言う。
「来たのは助右衛門の知恵じゃな」
「はい、それがし実はあの時後詰になろうと思っていました」
慶次が笑って答える、その笑みは普段と変わらない屈託のないものだ。
「しかしそこでこ奴がさっと止めまして」
「あの時か」
「左様で」
奥村を見つつ語る慶次だった。
「それで陣払いの後で言われたのです」
「それがしもです」
可児もそうだというのだ。
「それがしも後詰よりも殿の後を追いお守りする方がよいと」
「それでか」
「今追いつきました」
「その次第であります」
「ふむ、助右衛門らしいな」
信長は二人の言葉を聞いてから可児を見た、そのうえで笑みを浮かべて言う。
「有り難い知恵じゃ、ではじゃ」
「我等三人もお供します」
奥村は確かな笑みで信長に告げた。
「これで七人ですか」
「しかもこの二人か」
信長は慶次と可児という二人の武辺者を見つつ話す。
「有り難いな」
「この二人ならば大抵の者ならば退けられますな」
「そう思いまして」
そのことも読んでだった、奥村はそこまで考えているのだ。
「慶次も才蔵もあの場では止めました」
「後詰は猿達に任せたか」
「羽柴殿でしたらと思いまして」
奥村は見抜いている目だった、一点の曇りもない。
「後詰を務められます」
「それで慶次と才蔵をここに連れて来たか」
「左様です
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