16部分:第二幕その八
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第二幕その八
「あの子が」
「またあいつか」
伯爵は彼と聞いてまたしても怒った顔になるのだった。
「毎度毎度いつも私の前に現われる」
「はい・・・・・・」
「しかもまだ出発していないのか。何という奴じゃ」
いい加減腹に据えかねて扉を開けようとする。その時に言うのだった。
「出て来い」
ケルビーノがいると確信しての言葉である。
「悪戯小僧。もう容赦せぬぞ」
「あなた、何もそこまで」
夫人は今になってもまだケルビーノを庇う。
「あの子が可哀想です」
「そうやって甘やかすからにはやはり疚しいことがあるのだな」
「それは・・・・・・」
それは否定しはする。しかし伯爵は信じない。
「ですが疑いは持たれないで下さい」
「まだ言うつもりか?」
「はい。襟を開き胸をはだけて」
「襟に胸だと!?」
失言だった。この言葉が余計に伯爵を刺激する。
「まさかそなたは」
「ですからそのお怒りは間違っています」
「間違っている!?私がか」
「そうです。これ以上疑われるなら私も怒ります」
こう返す夫人だった。
「もう。それ以上は」
「では鍵を」
伯爵も引くところは引くが引けないものは引こうともしない。
「早く」
「あの子は潔白です」
「そんな筈がない」
当然ながら伯爵はそんな言葉は聞かない。
「そなたもあの小僧もな」
「悪気はないのです。あの娘は」
「ならばこそ会ってみせよう」
伯爵はもう完全に頭にきていた。
「その潔白を証明する為にも!」
「ああ!」
伯爵が扉を開けると夫人は絶望の声をあげて両手で顔を塞いだ。その扉から出て来たのだ。
「んっ!?」
「えっ!?」
二人はその扉から出て来た人間を見て思わず声をあげた。何とそこにいたのは。
「スザンナ!?」
「どうしてそこに!?」
夫人の今の言葉は幸い彼女の夫には聞こえなかった。
「何故ここにそなたがいるのだ」
「私はケルビーノではありませんが」
そのスザンナは陽気な笑顔を作って伯爵に対して述べる。
「ケルビーノはいませんよ」
「どうなっているのだ!?」
流石にこうなっては伯爵も首を捻るしかなかった。
「何故スザンナがそこに」
「何故なの!?」
当然夫人もこの事態を理解できなかった。
「どうしてここに」
「御二人ともわかっておられないわね」
スザンナはそんな二人を見てこっそり呟いた。
「なら好都合だわ」
「御前一人なのか」
「はい」
にこりと笑ってその困惑している伯爵の問いに答えた。
「その通りですわ」
「部屋の中を調べるぞ」
「どうぞ」
伯爵の言葉に笑顔のまま答える。
「お好きなように」
「それではだ」
こうして彼は部屋の中に入って行く。その間にスザンナは夫人
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