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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?
騎士だってたまには羽目を外したいんです。その6
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ひゅん、と耳元を風切り音が通り抜ける。木刀が通り抜けた音だ。長剣による突きと見せかけて短刀による一撃を叩き込むのが本命。速度も相まって型通りの剣道しかしてない人間ならばひとたまりもなく敗北するであろう剣に、しかし相対する小さな少年は眉ひとつ動かさず首を動かすだけで躱してみせる。
そして、その瞬間に勝敗が決した。

剣道三倍段という言葉がある。自分よりリーチの長い武器を扱う相手と対抗するにはその三段は上の技量が必要という考えだ。しかしリーチがネックである以上は距離を詰めることさえ出来てしまえば勝てるという事。だからこそ美由希は自分よりもリーチの長い棒を使うクロエの攻撃を紙一重で回避して懐に入り込んだ時に自分の勝利を確信した。

・・・その一瞬の油断が、勝敗を分けてしまったようだ。

「・・・はっ!!」
「きゃあっ!?」

体当たりで。
驚くべきことに、未だ小学生で体も出来上がっていないクロエの体当たりは美由紀を紙切れのように弾き飛ばしてしまった。それでも一瞬で体勢を立て直して何とか着地できたあたりはさすがといったところか。

「うっそぉ・・・!?クロエ君体重何キロあるの!?」
「45キロ」
「重いよ!明らかに体格と釣り合ってないよ!!しかもその体重でも私の方が重いよ!?」

事も無げに返答するクロエに美由紀は理不尽を感じて全力で突っ込みを入れた。
ちなみに9歳男子の平均体重は30キロ少しほど。普通の子供より細身なクロエがなぜそんなに重いのかというと、それは単純に普通の人間と筋肉の質や密度が違うからだ。なお美由紀の体重についてはプライバシーのために伏せておく。
・・・ちなみに今回は美由紀の方が体重が重かったため怪我はなかったが、もしも彼女の体重が45キロ以下だった場合体勢を立て直すこともなく壁に激突していたところだ。

「お姉ちゃんは、狙いが分かり易過ぎです。一点突破は一度の接近で決めないとタイミングを計られちゃいます。初撃をしくじった時点で戦略を変えるべきです」
「うう、返す言葉もございません・・・」

年下に失敗を指摘されてへこむ小太刀二刀御神流伝承者候補。しかし「お姉ちゃん」という言葉の響きに密かにお腹の下あたりがきゅんとしている美由紀であった。



そんな二人を遠巻きで見ながら士郎は思う。
クロエの体当たりはただの体当たりではない。相手の重心移動を完全に見極め、筋肉の瞬発と踏み込みのタイミングを完璧に合わせ、肩をぶつける位置が最も相手の重心を崩しやすい絶妙な角度で命中している。言わばただの体当たりではなく技術としての体当たりだ。

(クロエに武術を教えた人には是非とも会ってみたいものだ)

何故クロエが道場で稽古をしているのかというと、美由紀がクロエの武術の腕前を知りたいと言い出したこと
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