第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十八 〜洛外にて〜
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は今上帝の寵愛があればこそ、専横が許されている。もし、今上帝に何かあらば、その時は外戚が黙ってはいまい」
私の言葉に、皆が黙り込む。
不遜、と取られてもおかしくない会話だから、という事ではないだろう。
「秦の趙高の例を見れば、宦官に権力を持たせる事が如何に危険か、わからぬ道理もあるまい」
「確かに……。では、宦官と何進殿の間で、闘争が起こる。歳三様は、そう見ておいでなのですね?」
「そうだ。そうなれば、武力を持たぬ宦官は不利であろうな」
「歳三殿は、そうなれば何進殿が勝ち、弁皇子が皇位に就かれる、と?」
「可能性としては、な。だが、宦官は力はなくとも謀略を巡らすのは得意としていよう。自分たちがみすみす誅されるのを見過ごすとも思えぬ」
「そうなると、協皇子を担いで傀儡に仕立て上げ、何進殿を何らかの手で封じ込める……全く、魑魅魍魎の世界ですね」
稟が、大袈裟に溜息をつく。
「そうなったら、お兄さんはどうなさるおつもりですかー?」
「可能であれば、どちらにも与したくないところだ。そのような権力争いに巻き込まれるのは好むところではない」
「ですが、そうもいかないでしょうね。歳三様は、何らかの形で官職を賜るでしょうから」
と、思案顔だった疾風が、顔を上げた。
「歳三殿。何進殿と、内々にお会いになりませぬか?」
「内々に? そのような事が出来るのか?」
「はい。明朝、城門が開いてから、密かに何進殿につなぎをつけます。私に、お任せいただけませぬか?」
どうあれ、何進とは一度会っておかなければならぬだろう。
幸い、疾風は何進と面識があるという。
「だが、危険ではないのか? 大将軍はともかく、それ以外の者に顔を見られては」
「そこまで抜けてはおりませぬよ、歳三殿。これでも、無茶はしない性格ですので」
「……ふむ。稟、風、どう考える?」
「私は賛成です。内々とは言え、何進殿と面識を得ておくのは、何ら損にはなりませんから」
「風もいいと思いますよー。お兄さんの眼から見て、何進さんがどのような人物かを、確かめておく事も出来ますし」
「よし、ならば後は疾風に任せよう」
「ありがとうございます。必ずや、ご期待に応えて見せます」
疾風に頷き返し、
「では、今宵はここまでに致そう。……疾風、後で私の天幕へ」
「……は、はい!」
……稟が微笑ましい眼で、風がにやついた顔で見ているのは、気にするまい。
「お、お呼びにより参りました」
「うむ」
鎧を解いた疾風は、いつもと違って見える。
「どうだ?」
用意させた徳利を、掲げてみせた。
疾風は、意外そうに私を見つめる。
「酒、ですか? 歳三殿が?」
「ふっ、私とて全くの下戸ではない。霞や孫堅らのようには参らぬが、な」
「は、はぁ……」
「とに
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