モグラの唄
[1/3]
前書き [1]次 最後
「お前なんかきらいだ。」
遠い遠い、ソイツに言ってやった。
「俺の前に現れないでくれ。」
高く高く、見上げて言った。
おいらはモグラ。
穴の中。
暗く、冷たい穴の中。
わずかにアイツが覗いて見てる。
おいらの声なんてアイツは気にかけちゃいない。
構わずこっちを見てくるんだ。
そもそも聞こえてすらいるんだろうか。
おいらなんてちっぽけだ。
鳥から聞いた、話によると、
ヤツはとっても暖かく、
近寄るほどに熱くなり、とてもじゃないけど触れられない。
誰もあそこへは近づけない。
きけば聞くほど恐ろしい。
こんな恐ろしい物はない。
出来ればこの目で見たくもない。
冷たく暗い、この場所が。
おいらはここが好きなんだ。
暑くてまぶしいアイツから、
どうにかこうにか逃げなくちゃ。
鳥が歌ってる。
いい天気だよ。遊ぼうよ。
そんなの知るか。
そんな事より逃げなくちゃ。
上から照らす、アイツが怖い。
出口はどこだ。逃げ道は?
どうやら深い、穴に落ちたらしい。
穴を掘って進んでいこうとも、
掘っても固くて進めない。
どうしよう、どうしよう。
アイツがこっちを見ているよ。
おいらはアイツに見られているよ。
だんだんおアツくなってきた。
おいらここで終わりなのかな?
太陽に当たったら死んじゃうんだって、
どっかの誰かが言っていた。
ここがおいらの墓場なのか。
助けてくれる者はいない。
いるとすれば、アイツだけ。
アイツはおいらを助けてくれるのか?
アイツにおいらは見えているのか?
おいらの声が聞こえるのか?
おいらの願いを聞いてくれるのか?
おいらにはアイツは眩し過ぎる。
暗い、おいらを笑ってるみたいだ。
明るい方へ出ておいで。
地上の奴らは笑ってる。
頼むから、おいらを暗い所へやってくれ。
冷たい土へ、連れてってくれ。
死んだら湿って柔らかい、
土の中へと埋めてくれ。
おいらをそんなに照らさないでくれ。
ああ、でも生まれ変わったら、
地上に出ても生きられる、そんな体で生まれてみたい。
一度でいいから見てみたい。
地上の奴らを見返したい。
土はこんなに柔らかいんだって。
土はこんなに優しく、冷たいんだって。
死ぬほど照らしてくるような、ア
前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ