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甲羅の恋。

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こうらのこい。下





気づけばそこは、防波堤だった。

しばらく私は気を失っていたみたいだ。

太陽は沈みそうなほど傾く頃になっていた。

「あ、気が付いた?」

――さっきも同じことがあった気がする。

しかし、さっきとは全く違っていた。

声が出なくなっていた。

何故だろう。おかしい。

わけがわからなかった。


彼は私の頭を優しく撫でた。

しかし、明らかにおかしい。

彼の手が私の視界全てを遮ってしまうほど、大きかった。

「しかし、不思議なこともあるもんだ。」

私はただ、大きく目を見開いて彼を見つめることしかできなかった。

「泳ぎ方も自分が何なのかも忘れてるのか?」

彼の瞳は大きかった。

そしてとても、優しかった。


「――だったんだな。」

(え――?)

一瞬おどろいて、私は全てを思い出した。


私は逃げるように海に飛び込んだ。

――なぜこんなことが?

(私は……私は……)


「待てよ。逃げんなって。」

彼の方を振り向きたかった。

「行かないと。」

私は言葉を発せるようになっていた。

それは、私の中の、ある一種の勇気のような感情なのかもしれない。


「私の事を助けて頂き、本当にありがとうございました。

けれども、これ以上は、一緒にいられません。

私の本当の姿を知られたからには。」

「でも、今は人の姿になってるぞ。」

(――え!?)

私は自分の手のひらを見た。


「か、関係ありませんっ! とにかく……私は帰らなければっ!」

「どこに?」

彼は私のすぐ後ろにいて、私の手を掴んでいる。


本来ならば、助けてもらったお礼をしなければならない。

しかし、彼を連れていくのはなんだか嫌だった。

「……。」

私は彼に惹かれていた。

出会ったあの瞬間から。

こんな気持ちは初めてだった。



「本来ならば、私の遣える場所――竜宮城へ、あなたをご招待しなければなりません。」

――私はただの亀。竜宮城に遣える身。

彼は、惹かれてはいけない存在だった。

気づいてはいけない淡い恋心だった。


竜宮城へ連れていけば、男はたちまち姫の虜になる。

今回ばかりはそれが何故かたまらなかった。

気持ちをごまかして、忘れてしまえばいい。

全てなかったことに――そう、しなくてはならないのかもしれない。


となるとあとは、私がこのまま黙って帰ってしまえばいい。

しかしそうすればもしかするとお咎めを受けることになるかもしれない。

私は遣える身でありながら、なんとわ
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