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ローエングリン
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第三幕その四

「ドイツの、ブラバントの栄光と勝利の為に神に遣わされたあの方は」
「間も無く来られるかと」
 あの伝令が王に恭しく告げた。
「ですから暫しお待ちを」
「そうさせてもらうか。むっ・・・・・・」
 だがここで。突如としてこの場に不釣合いな一団がやって来た。見れば彼等は沈んだ顔で骸を運んでいる。皆がその骸を見れば。
「あれは伯爵ではないか」
「そうだ、伯爵だ」
「テルラムント伯爵だ」
 皆顔を顰めながら次々に言う。
「何故ここに!?」
「どうしてだ」
「ブラバントの保護者の御依頼です」
「だから我々は」
 四人は沈んだ顔で一同に述べた。既に王の前に設けられた広場にテルラムントの亡骸を置いている。
「ここに参りました」
「いずれあの方も」
「来られるというのか」
「おや、あれは」
 ここで一堂の中の一人が声をあげた。
「あれは公女だ」
「そうだ。公女だ」
 他の者達もその声を聞いて顔をあげて気付いた。エルザがここに来ているのだった。
「だがおかしいな」
「確かに」
 彼等は次にエルザを見て首を捻るのだった。
「何故だ。御顔が優れぬ」
「真っ青ではないか」
 見ればその通りだった。エルザは青い顔をして項垂れてここに来ているのだ。
「どうされたのだ?」
「わからぬ」
 皆首を捻るばかりだった。
「何故あの様な御顔に?」
「まさかと思うが」
「公女よ」
 王が己の前にその蒼ざめた顔でやって来たエルザに対して問う。彼女が連れていた多くの貴婦人達は貴族や騎士達の中に混ざっていく。彼女一人になっていた。
「どうしたのだ?」
「それは」
 言おうとする。だが言えなかった。
「それは・・・・・・」
「その蒼ざめた顔、只事ではない」
 王から見てもそうであった。
「やはり何かがあったのか」
「それは」
「あの騎士殿が出征されるからなのか」
「そうではないのか?」
「そうだな」
 他の者達はそこに答えを見出そうとした。
「それならばわかるな」
「うむ」
「全くだ」
 こう言い合って彼等は納得するのだった。
「むっ」
 ここでまた誰かが声をあげた。
「来られたぞ」
「騎士殿か」
「そうだ」
 こう一同に告げる。
「ここに来られた」
「だがどうだ」
 しかし騎士のその顔を見て言うのだった。
「あの御顔は」
「確かに」
「険しいぞ」
 皆彼のその顔を見て述べた。
「戦いを前にしているからか?」
「いや、待て」
 細かく見ている者がさらに言う。

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