第九章 双月の舞踏会
第六話 揺れる心
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の動きによってそれは払拭されることになる。
それは白いユニコーンに引かれる白馬車の主。
白馬車の窓が開き、傍に控える衛士が顔を近づける。何やら伝言を言い渡された衛士は、士郎の元まで駆け出しその耳元にその旨を伝え終えた。伝言を受け取った士郎は、馬の腹を蹴り白馬車に近づく。
民衆の目と耳が士郎に吸い寄せられる中、白馬車の窓が開くと、中から白い手がすっと差し出された。
一目で分かる程にそのたおやかな腕には、気品さえ感じられる。
それを目にした者たちは、誰一人間違いなくそれが女王アンリエッタのものであると理解した。
馬にまたがった姿のまま、窓から差し出された手をそっと受け取った士郎は、流れるような仕草でその白い手の甲に唇を当てる。
瞬間、観衆の中から「おおっ」と言うどよめきが広がる。
女王が平民に御手を許す。
余りにも明確な答えに、噂が本当であったと理解した民衆から観呼の声が上がる。
「シロウッ! 『赤き英雄』シロウ万歳ッ! シュヴァリエ・シロウ万歳ッ!」
突然湧き上がる民衆からの歓声に目を丸くしながらも、士郎は照れたように頬を掻きながら隊列に戻る。
耳が痛い程の歓声を前に、隊列に戻った士郎に、傍に寄ってきたギーシュが笑い掛けた。
「すごい人気だね。ほらみんな期待してるよ。手ぐらい振ってみたらどうだい?」
「勘弁してくれ」
「まったく、七万の軍を壊滅した男とは思えないね」
窓から戻した右手に、左手を添えたアンリエッタは、まるで宝物を抱きしめるように両手を胸元に寄せた。
目を閉じ顔を俯かせたアンリエッタの顔には、柔らかな笑みが浮かんでいる。
「ふふ」
意識せず笑みが溢れ、隣にマザリーニがいることを思い出したアンリエッタが慌てて横を見る。するとそこには、顔を逆方向に向けて俯くマザリーニの姿が。ゆらゆらと揺れる身体から、疲れから寝ているのでは思ってしまうが、アンリエッタは気づいていた。マザリーニの頭の上に乗っている丸い帽子。それが落ちそうになる度に身体が不自然に動いていることに。
その普段とのギャップとマザリーニの気遣いに、アンリエッタの顔が緩む。
顔を前に戻し、深く腰掛け、天井を見上げる。
気付くと、随分と身体と心が楽になっていた。右手を顔に翳したアンリエッタは、微かに熱くなる頬に左手で押さえながらゆっくりと瞼を閉じた。
アンリエッタ一行が王宮に到着すると、護衛の騎士隊は一部を除き解散となる。王宮に務める騎士隊の者で当直でない者たちは、それぞれ帰る準備を始めている。その中に、水精霊騎士隊の姿もあった。王宮の隅で学院に帰る準備を始める彼らの中に、一際背の高い人物を見つけたアンリエッタは、不意に足を止めそうになった足を動
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