第九章 双月の舞踏会
第六話 揺れる心
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れた者は、それを纏う者が杖を持たず、代わりに腰に剣を差していることに気付き戸惑いの声を上げる。
立派な体格の、烏の濡れ羽色をした漆黒の馬に乗るのは、これもまた鎧の上からでも分かる程鍛え抜かれた身体を持つ男。
白い髪に浅黒い肌。赤いを基調にした鎧を纏う身体は、馬に乗っていてもその背の高さを伺える。
杖を持っていないことからメイジではないとは分かる。しかし、他に四人しかいないようだが隊員は全てメイジということに、水精霊騎士隊に目を向ける衆人は首を傾げていた。
民衆の視線が集まっていることに気が付いたのか、ギーシュが瞳を輝かせながら身体をうずうずと動かしだす。
背後の不穏な動きに気付いた士郎は、首を後ろに向けギーシュを睨み付ける。
「目立つ行動は控えろよ」
「い、いや。そうは言ってもだね。ほ、ほら、彼らも期待しているようだし」
士郎の視線に怯えたように目を澱ませたギーシュだったが、水精霊騎士隊を指差し『あれは誰だ?』とざわつき始めた観衆に向かって指を向けた。
「ここで一つサービスでもしてやるの―――」
「元気が有り余っているようだし、次の訓練はもう少し厳しめ―――」
「サアミンナ、オチツイテイコウカ」
背後を振り向き他の隊員に注意を促すギーシュの変わり身の速さに、士郎は苦笑いを浮かべながら手綱を握り直す。
士郎が乗る馬は、カトレアから渡された馬であった。
騎士となったことで、ルイズから絶対に馬は必要だと言われた士郎は、手元にいくらか残る金で適当に買おうとしたが、事情を聞いたカトレアが実家からついてきた馬を一頭プレゼントされたのだ。最初は断ろうとした士郎だったが、『この馬は人を乗せないということで処分されそうになっていたのを助けた馬なんですが、最近元気が有り余ってるのか、他の馬に怪我をさせたりするので、このままでは処分されてしまいそうなんです。シロウさんならこの馬を乗りこなせると思いますので、この馬を助けると思って貰ってください』と言われれば断れる筈もなく。こうしてカトレアから貰い受けた馬に乗ることになったのだ。確かに最初は振り落とそうと暴れに暴れた馬だったが、小一時間も乗り続けると諦めたのか認めたのか暴れなくなり、今ではこちらの指示に従順に従っている。
最初は水精霊騎士隊を指差し囁きあっていた民衆たちは、次第に士郎にその指先を向け何やら話し合い始めた。
「剣を持ってるってことは平民?」「何で平民が騎士隊に?」「しかも隊長なのかあれ?」「平民がメイジの騎士隊の隊長?」段々と大きくなる民衆の声は、次第に剣を持つ男の正体は何者だという話になっていく。
「剣に見えて本当は杖だ」や「貴族が飾りとして剣を持っているのでは?」等と言った話が交わされてい
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