第九章 双月の舞踏会
第六話 揺れる心
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え、出席します」
「は? え、あ、失礼しました。しかしお言葉ですが、折角の機会ですので御休みになられれば……」
軽く一蹴されたことが信じられず、秘書官は叱責覚悟で休むことを勧める。スケジュールを管理する秘書官であるがゆえに、誰よりもその激務を知るため、今何よりもアンリエッタに休みが必要なことは理解していた。
「我が国の明日を担うことになる新入生の励みになるのならば、出席する必要はあります。あなたの気遣いは嬉しいのですが、今回は……」
「分かりました。ではそのようにします」
アンリエッタの決定に否が言える筈もなく、秘書官は頭を下げると退室していった。
またも一人部屋に残されたアンリエッタは、秘書官の気遣いを断ったことの理由に嘘を言ったことで心の中で謝りながらも腕を胸に抱く。
魔法学院で行われる新入生の歓迎会を兼ねて行われるスレイプニィルの舞踏会は、参加者がある方法で仮装することで有名であった。
その方法であれば、周りに自分と知られず彼に会うことが出来るかもしれない。
期待に膨らむ胸を抑える手に『風のルビー』が光る。
「……二度と人を愛することは出来ないと思っていたのに……これが本当にそれであるのかはまだ分かりませんが……」
愛した人の最後の願いを思いだし、アンリエッタは『風のルビー』をはめる左手をきつく胸に抱きしめる。
「確かめて本当にいいの……ルイズ……」
胸の痛みをこらえるように胸を抑えるアンリエッタの顔には、切なげな表情が浮かんでいた。
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