第九章 双月の舞踏会
第六話 揺れる心
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せない……『清貧女王』と言われながらも、実態はご覧の有様です。幻滅させてしまいましたか」
「いいえ。それどころか安心しました。ウェールズさまの想いが詰まったそれまで売り払っていたらどうしようかと気が気ではありませんでしたから」
胸に手をあてほっと溜め息を着くルイズに、アンリエッタは首を傾げた。
確かにこの『風のルビー』はウェールズ皇太子の形見だが、そこまでルイズが心配するようなものではなかったはずだ。首を傾げるアンリエッタの姿に、ルイズはほっと安堵を浮かべていた顔を引き締めると、重々しく口を開いた。
「実はこの指輪ですが、ウェールズさまの形見であるということの他に、『虚無の担い手』にとって重要なものであると思われるのです」
「どういうことですか?」
ルイズの様子に、アンリエッタの顔に緊張が浮かぶ。
「もっと早くお伝えしていれば良かったのですが、その『風のルビー』をはめれば、『虚無の担い手』ならばこの『始祖の祈祷書』が読めるようになります」
懐から取り出した『始祖の祈祷書』をアンリエッタに見せるルイズ。
「以前お話した通り、『虚無の担い手』はわたしの他に三人いると思われます。少なくともその内の一人はわたし達に敵意を持っています。ですから、もし『風のルビー』を売り払い、それが敵の担い手が手に入れ、更にこの『始祖の祈祷書』が盗まれれば、一体どうなっていたことか」
「っ、それは、危ないところでした」
ルイズの言葉に息を飲んだアンリエッタは、青ざめた顔で安堵の息を吐く。
「ええ。でも本当に良かったです。姫さまが指輪を売り払っていなくて」
「本当に……危ないところでした」
ぽつりと呟かれた言葉に、ルイズが顔を横に向けるとアンリエッタが顔を俯かせていた。日差しを前髪が作る陰影が、アンリエッタの美しい顔を隠す。顔が隠されたことから、その声に潜む疲労に気付いたルイズが、そっと肩に手を置く。
「姫さま随分とお疲れのようですが、少しはお休みを取られたらいかがでしょうか」
「ありがとうルイズ。ですが大丈夫です。これくらいは皆も同じですから」
肩に置かれたルイズの手の上に、そっと自分の手を添えたアンリエッタが顔を上げ小さく笑顔を浮かべる。
「そう言えば、ルイズはどうしてここに? 指輪の件で来たのかしら?」
アンリエッタはルイズの励ましに力を得たように、一度うんっと背を伸ばすと、体ごと曲げて横を見る。
「うっ! そ、それは指輪の件の他にも……実は、ですね」
「実は?」
アンリエッタの勢いに抑されるように、身体が横倒しになりかけるルイズだったが、気を取り直すように斜めになった姿のまま、こほんと一つ咳をして体ごと横を向いた。
「シロウのことでお話が」
「ッ
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