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アメフラシのがんじゅうろう
プロローグ
[前書き]

[1]本文 [2]次話
 私の名前は、がんじゅうろう。それだけは記憶に残っている。自分の指先を見ると爪が少し伸びていた。他人事のように言ってしまうが、どうやら私は異世界にいるらしい。私は私が住んでいたところを覚えていないが、(とは言っても言葉はしっかり覚えているが)ここは元々いた場所ではないとすぐにわかった。すぐ足元には、ブリーフケースが横たわっていた。そして足元を見ると安っぽい黒のビニール靴で、やけに柔らかい地面をしっかり踏みしめていた。次の瞬間、地面が大きく揺れた。この世の終わりかと思うくらいの大きな揺れだった。妙なのは、地面がゴムのようにたるんでいることだ。崩れるどころか、私を上へ上へとピンボールのように跳ね返し、地面に叩きつけた。山という山は皆、陽炎かかったように揺れており、太陽ですら、楽しげに揺れていた。
 しばらくすると、揺れは収まった。目眩がする。これはたまらない。「私は一体どうなるんだ。」そう呟いて空を仰ぎ見た。
 こんな状態から奇妙な、しかし興味深い物語が始まってしまうのであった。
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