崑崙の章
第15話 「それで、私はどうしたらいいのかな?」
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の政策で邑ごと移動が決まって人っ子一人いやしねえし……」
「やっぱ巴郡あたりにいったほうがよかったんじゃねぇか?」
その男の呟きに、周囲の賊が嘲るように笑い出す。
森で拾ってきた胡桃をかじりながら、傍にいた一人が溜息と共に呆れた声を出した。
「馬鹿言え。お前は新参だからしらねぇかもしれんがな。巴郡の商人を襲ってみろ、その日のうちに呪い殺されるぜ」
「ああ。あの街に手を出した盗賊は、悉く酷い死に方してるしな……巴郡襲うぐらいなら、白帝城に戻って黄忠と戦ったほうがマシだぜ」
「そんなにかよ……よく錦帆賊のやつら平気だったな」
男は、錦帆賊を思い出す。
頭目らしき男の濁った目を思い出して、思わず震えた。
「錦帆賊は、街自体は襲わねぇよ。やつらが相手にしていたのは、巴郡にくる商人相手だったからな。それに、噂によるとその錦帆賊も悉く打ち首になって、川縁に首が晒されたらしい」
「げ……じゃあ、厳顔の兵を殺した俺達もやべぇじゃねぇか」
「だから漢中にきたんじゃねぇか……ここは最近刺史になったばかりの劉備が治めているが、まだちゃんとした統治ができてないらしい……今が狙い時なんだよ」
「あの丘を越えれば眼と鼻の先だ……お前ら、そろそろ準備しろよ!」
先頭を行くこの集団の頭目が、声を上げる。
その言葉に、それぞれが武器を取り出して点検し始めた。
「よーし……準備はいいかあ! もうすぐ夜だから、中に入ったら火ぃつけまくって奪えるもんは奪いつくせ! いくぞぉ!」
「「「オオッー!」」」
男の言葉に掛け声を上げる賊の集団。
そして頭目が丘を昇って、その眼前の漢中を覗こうとした瞬間。
「お前ら! そこまでなのだ!」
突然の声に周囲がざわめく。
「だ、だれだ!」
「どこからだ!?」
「ガキの声だったような……」
そう互いに顔を見合わせた瞬間。
「弓、放てー!」
その言葉は、背後からだった。
その声と同時に、背後の森から矢の雨が降ってくる。
「うわ、伏兵だ!」
「奇襲だ!」
「ぎゃああー!」
「やべえ、前に逃げろ!」
突然の森からの矢の雨に恐慌状態になる賊たち。
頭目の男は、その状況を収拾する能力はなかった。
「丘の反対側に逃げろ! 矢の来ないところにいくんだ!」
そう言って丘を越え、漢中側へと走る賊の一人が立ち止まった。
「なっ……」
男の目の前に、漢中の外壁の前に立ち並ぶ兵の姿に愕然とする。
距離にしておよそ二里(一km)もない場所に横一列に並んだ兵が弓を引き絞っていた。
そしてその閉切られた大手門の前に、一人の女性が悲しげな顔で立っている。
「降伏してください。このままでは全員死にますよ
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