第三章
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「心配だね」
「本当にね、どうなるかしら」
「怪我人だけは出て欲しくないよ」
僕は切実にこう思った。
「選手の誰かが壊されないことをね」
「しかも試合は向こうの国だから」
あらゆる嫌な事態が想定出来た、しかも極めて簡単に。
「審判も観客もね」
「ありとあらゆる要素が揃い過ぎてるわね」
「どうなるかな、少なくとも何も起こらないなんて考えられないよ」
全くだ、嫌なトラブルが起こることは確実に思えた。
それでだ、僕達は覚悟を決めてだった。
そのうえで二人でその試合を観ることにした、すると。
観客席の横断幕だった、そう来た。
あれこれ書いてあってしかも何か訳のわからない人物画まである、それもやけにでかい。
それを観てだ、僕はやはりと思って彼女に言った。
「来たね」
「そうね」
「これで済めばいいけれどね」
「そうね、怪我人が出なかったら」
最早普通のスポーツの試合を観ている気分ではなかった、アストロ球団の試合を前にしている気分だ。それこそラフプレイあり外道プレイありの野球ではなく決闘漫画のだ。
その懐かし漫画を思い出してだ、僕も彼女も話した。
「いいわね」
「もうそれだけでね」
怪我だけはどうしようもない、試合に負けてももうどうでもよかった。それよりも選手が怪我をしないことが肝心だ。
それで見守っているとだ、幸い誰にも怪我人は出なかった。試合は日本が勝ったがそんなことはもうどうでもよかった。
垂れ幕のことはあった、だが僕達はあちらの言葉はわからないのでこう言うのだった。
「何て書いてあったかな」
「わからないわ、けれどね」
「日本にとって嫌なことが書いてあったのは確かだね」
「そのことは間違いないね」
このことは確信出来た、今回も極めて容易に。
「まあそのうち訳されるからわかるね」
「そうね」
僕達はとりあえず怪我人が出なかったことをよしとした、そして。
次の日にその垂れ幕の文字がわかった、それは何と書いてあったかというと。
「歴史を忘れた民族に未来はないってね」
「そう書いてあったのね」
「うん、いつもの主張でね」
「しかもよね」
「旭日旗が振られていたってね」
文句をつけてきた、今回もトラブルだった。
「言ってきたよ」
「あの旗ね」
「そう、旗がね」
まさにその旗がだった。
「クレームの対象になったんだよ」
「今度は旗なのね」
「まあその歴史でね」
僕はここで彼女に日本の歴史の話も出した。
「ほら、あそこを併合したから」
「戦争してないけれど」
「それでも向こうはそう思っていないから」
あくまで戦争をしたと思っているのだ、この辺り僕も訳がわからない。
「それであの旗にクレームつけてきてるんだよ」
「クレームっていう
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