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ローエングリン
12部分:第二幕その五
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第二幕その五

「エルザ公女が背の君と憧れておられるあの神の御使いの異邦人の方を」
「あの方を」
「それでは」
「はい、そうです」
 貴族や騎士達に対しても答える。
「この度名実共にブラバント公に封ずるとのことです」
「そう、それこそが相応しい」
「あの方には」
「ですが」
 しかしここで伝令は注を付けてきた。
「あの方は公爵とは呼ばれたがらずただブラバントの保護者と呼ばれたいとのことです」
「そうですか。それでは」
「我等もまたその様に御呼びするとしよう」
「あの方を」
「是非御聞き下さい」
 伝令の言葉は続く。
「今日保護者は皆様方と共に婚礼を祝われる。しかる後に明日我々と共に東に出陣されるとのことです」
「よし、これで我等の勝利は約束された」
「ハンガリーに勝てるというもの」
 貴族達も騎士達もその言葉を聞いて喜ぶ。
「あの方と共に戦おう」
「そして勝利を」
「我等の手に」
殆どの貴族達は喜んでいた。しかしテルラムントに近い者達は違っていた。四人程いるが彼等は暗い顔をして集まりの端でひそひそと話をしていた。
「まずいな」
「全くだ」
「我等は今後肩身が狭いぞ」
「うむ」
 その陰気な顔で話をしている。
「全く以ってな」
「どうしたものか」
「だがどうしようもない」
 こう言うしかなかった。
「こうなれば誰からも気付かれることなく」
「静かに端にいるしかないな」
「そうだな。そうしよう」
「うむ。それこそが我等の為だ」
「いや、大丈夫だ」
 だがここで四人に対して言う漆黒の男が出て来た。彼は。
「あの男の化けの皮は必ず剥がれる」
「なっ!?貴殿は」
「まさか」
「わしはわかったのだ。あの男のことがな」
 テルラムントであった。多くの貴族達の歓声を暗い怒りの目で見据えつつ言うのである。
「だからだ。今日にも告発しよう」
「一体何を?」
「だが今はここにいては危ない」
「卿にとっても危険だ」
 こう言って彼等の身体で素早く彼を隠した。そのうえでさらに端に消えて行く。
「今は潜んでいるべきだ」
「詳しいことは後でな」
 こう言ってまずは隠れた。集まりには今度は四人の立派な麗しい小姓達が出て来た。そうして高らかに一同に対して告げるのであった。
「どうか皆様」
「道をお開け下さい」
「エルザ公女の為に」
 こう言うのである。
「どうかこちらに」
「是非共」
「うむ、それでは」
「是非」
 貴族達も騎士達もすぐに道を開ける。するとまずは華やかな服の貴婦人達が出て来た。彼女達が案内役だった。その彼女達の行進に対して貴族達も騎士達も声をかけていく。
「長く屈辱を耐え忍んだ姫よ」
「エルザ=フォン=ブラバント」
 彼女の名も呼ばれる。

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