第10局
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瀬の言葉に、思わず口を滑らせてしまったヒカル。
慌てて口を閉ざすが奈瀬にはしっかり聞かれてしまった。
何かを探るようにヒカルをじっと見る奈瀬。
「…ヒカル君、何か隠し事してるでしょ。」
「うっ!」
―おー、なかなか鋭いお嬢さんですねえ。
奈瀬の追及に焦るヒカルと、感心する佐為。
「んー…、まぁ、気になるけど、とりあえずはいっか。」
「と、とりあえず…?」
「ん。ねえ、ホントに誰かに碁を教えてもらったりしてないの?」
「あ、ああ。」
―まー、犬っころみたいな奴はいるけどさあ…。
―犬っころ!何ですかヒカル、その言い方!
「じゃあ、普段碁の勉強はどうやってるの?」
「家で、あかりと打ったり、棋譜を並べたりかな。」
「あかり?」
「ああ、俺の同級生の友達。オレの碁の弟子。」
―…ヒカル、それは言わないほうがよかったのでは?
―え、なんかまずかった?
「ふーん、あかりちゃんかぁ…。」
顎に手を当てて軽く考え込む奈瀬。視線はじっとヒカルを見つめていた。
「…なんだよ?」
「ね、時間がある時でいいからさ、私と打ってくれないかな。ヒカル君にもっと打ってほしいんだ。」
「えっ!いや、そんなの無理だって。」
「なんでさ。あかりちゃんには教えてるんでしょ?」
「いや、あかりは幼馴染だからさ、昔っからずっと一緒だったから、あいつは特別っていうか。」
「ふーん…。」
そういいつつ、ジトッとヒカルを見続ける奈瀬。そして、何か思いついたようで、ニコッとヒカルに笑いかけた。
「そうだ、今日は誰と来たの?一人じゃないよね?」
「え、ああ、母さんと。受付の手伝いをしてるよ。」
「そっか、お母さんとか…。」
「な、なんだよ。」
「ま、今日はここまでにしとこっか。そろそろ式も始まるみたいだし。ほら、あっちみたいだよ。」
「あ、うん。」
「それじゃ私、親の所に行くから、またね、ヒカル君!」
「さ、さよなら。」
何とか無事にしのぎ切ったと、胸をなでおろすヒカル。
―ふー、びっくりした。前はあんなこと一回も言われなかったのにな。ま、無事に済んでよかった。
―…無事に済みましたかねぇ。
―なんだよ佐為、怖いこと言うなよ!
―まぁ、なるようになるでしょ。これも縁ですよ、ヒカル。
―でも…、オレの碁が誰かを導くか…。
先ほどの奈瀬の言葉をじっと考え込むヒカル。そんなヒカルを佐為は優しく見守っていた。
そのころ奈瀬は、ニマニマと笑いながら受付に向かっていた。もちろん、ヒカルの母親を探すためだ。だが幸か不幸か、ヒカルは全く気が付いていなかった。
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