第三十二話 闇の書
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そう言うと彼女は自分の胸に手を埋めた。
「ん、んん……」
苦しそうな声を出しながら、手を引っ張り出す。
「あ、とは、これで!」
そして、力強く握り潰す。
少ししてゆっくりと開かれるその手の中には銀色のリンカーコアが輝いていた。
「あ、……これ、けっこう、…辛い」
肩で息をする彼女。
自分のリンカーコアを引き抜くなんて、そんな無茶をする人間は初めてだった。
「あと、お願い」
「はい、分かりました!」
彼女はそれをお姉さんに渡して、私の横に倒れる。
「後は寝かせて……」
そう言うと彼女は寝てしまった。
すうすうと、静かな寝息が聞こえる。
「まったく、無茶をするんだから」
また別の人がこの部屋に入ってくる。
「ブリュンヒルデ、彼女の言った物は用意しておいたわよ、それじゃあ私は八神家の監視を始めるから」
「ありがとうございます、フィリーネ」
そう言うとブリュンヒルデさん(あれ? クリムさん?)は私の縄を解いて、私のクラールヴィントを返してくれた。
「これを闇の書に食わせなさい、必ず役に立つでしょう」
私の手に、彼女のリンカーコアを握らせる。
「あの、一体どういうことですか?」
「知らなくていいことです、あなたたちは今まで通りに蒐集しなさい」
ブリュンヒルデさんは私のことが気に入らないのか、彼女とは違う感じで話しかけてくる。
「まったく、マスターもマスターです、自分のリンカーコアを引き抜くなんてなんて馬鹿を、そんなにあの子のことが大事ですか、大体、私も最初の時以来扱いがだんだんと雑になってきているというのに、なんてうらやま――、いえ、自己犠牲もいいことです! いえ、それがマスターのいいところであって、フィリーネもマスターのことを認めているのですが、今回ばかりは――」
その後、彼女のマスター自慢というか惚気はフィリーネさんが止めるまで続いた。
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