第5章 契約
第71話 名前
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界の範囲で転移魔法は行使可能。
但し、今は夜。更に波が荒く、其処まで遠方が見渡せるとは思えない状況。ならば、一度上空に舞い上がってから、暗視と遠視の術を使用したタバサか湖の乙女と意識を直結させてから転移を行えば問題は有りませんか。
ただ、この埠頭がベルジェ埠頭と呼ばれる埠頭ならば、ここから三キロ沖合に浮かぶ島と言うのは……。
「その島と言うのは、もしかしてイフ島の事なのか、ティターニア?」
そう問い掛ける俺。
確か、地球世界の西暦に換算すると、今年は清教徒革命が起きて、オリヴァー・クロムウェルにステュアート朝が打倒された年に当たるから、おそらく一六四九年。
地球世界の歴史から考えると、この時期にはイフ島に存在していた監獄にユグノーたちが送り込まれて居たはずなのですが、残念ながらこのハルケギニア世界のガリアは、地球世界のユグノーに当たる改革派と呼ばれる連中の方が勢力を握っている為に、新教徒たちが囚人としてイフ島に送り込まれているとは考えられない。
だとすると、イフ島に有った修道院がオスマントルコの海賊に襲撃を受けて衰退するのが一六世紀のはずですから……。
「そうです。イフ島に有った湖の修道院跡に行って欲しいのです」
大体、俺の予想通りの答えを返して来るティターニア。
ただ、湖の修道院?
確かに、西洋で有名な湖の畔には修道院が結構、存在していたとは思いますが、名前に湖の、……と付いた修道院は記憶には有りません。
もっとも、もしかするとそのイフ島の規模が、俺の知って居る地球世界のイフ島の規模よりも遙かに大きくて、島内に有名な湖が存在している可能性もゼロでは有りませんか。
それならば、
「一度、有視界内の上空に転移した後に、そのイフ島をタバサに遠視と暗視を同時に行使して貰ってから、意識を俺と同期させ、転移を行う。
ティターニア。それで問題ないな?」
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