第5章 契約
第71話 名前
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…。
まして、この世界のガリアには、本来、地球世界ならば公爵位を持って居るはずの家名が何故か侯爵位に留まって居ますから、王家に流れる夜魔の王の血筋と言う事を、すべての侯爵家が知って居るとも思えません。
故に、王家にお妃を入れるには、同じような血筋を持った家柄。例えば他国。同じように始祖の血を引く王家などから入れるべきなのですが……。
真面に始祖の血を引いていると言えるのはトリステインとアルビオンの両王家。しかし、どちらも正当な血を引いているのはアンリエッタにティファニアのみ。後は、トリステインの公爵家ですが……。
何処の王家も血が絶える寸前のような状態で、其処から新しいお妃様を迎え入れる事は難しいですか。
「それにな……」
俺の思考が、少なくとも一時的にジョゼフの影武者を演じるのも止むなしか、と言う方向に傾き掛けた事に気付いたのか、ゆっくりと聖賢王ジョゼフ一世がトドメの台詞を口にする。
「儂は、イザベラの母親以外、妃として迎え入れる心算はない」
一国の王として。更に貴族の家長としては間違いなく失格と成る言葉を……。
但し、ある意味、その相手の女性に対しては一番誠実な対応ではないかと思える言葉を。
そして、その辺りはイザベラに然るべき婿。男系男子の系譜を継ぐ人間を王配として迎えて王位を継がせる、と言う選択肢を捨てている以上、何となくでは有りますが、予想は出来た内容ですか。
真面な親ならば、現在のガリアを取り巻く状況から考えて、自らの娘を熱せられた鉄板の上で一生踊り続ける事を強要される立場に就かせる事は、流石にたじろぐでしょうから。
それに吸血姫に覚醒していないイザベラの残された寿命と、夜魔の王に覚醒したジョゼフに残された寿命とを比べると、おそらくはジョゼフの方が長い。
つまり、イザベラ姫は適当な相手が見つからなければ、一生、あのままガリアの姫として暮らしたとしても、何の問題もなく過ごす事が出来ると言う事です。
その上……。
俺は、飄々とした雰囲気で俺の目の前に立つガリア王を見つめる。
ハッキリとした事は判りませんが、この王は、王位を自らの子孫に継がせる事よりも、早逝した自らの妃との思い出の方を大切にしたい、と言う事を暗に示して居ると思います。
そして、その考え方は理解出来ますから。
いや、其処まで愛した相手を失っても尚、ジョゼフ王は、この難しい状況のガリアの舵取りを行っています。
ガリアには真面に機能する三部会も存在していなければ、高等法院も存在していない。彼に助言を行う枢機卿と言う存在も居ない。
すべての責任は、現在、彼の両肩に掛かっているはずです。
このガリアの王制と言うのは、そう言う王制。王に絶対的な権限が集中する、俺が知って居る範
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