第5章 契約
第71話 名前
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「但し、その為には――――」
少し……。いや、かなりマズイ台詞をこの蒼いオッサンは口にする。
何故かその事に付いては瞬時に判断が付いたのですが、しかし、その台詞を遮る事が出来る訳はなく、
「シャルロットを娶ってガリア王家の血筋を次代に繋いで貰う」
ほぼ、予想通りの内容を続ける聖賢王ジョゼフ一世。そして、これは当然の帰結。
何故ならば、王家の人間に重要なのは己の家の血筋を残す事。これが一番重要な仕事ですから。
それに……。
そう考えながら、傍らの寝台の上で上半身だけを起こした状態にて、俺の答えに神経を割いている少女の雰囲気を探る。
いや、探る必要など初めから存在して居ませんか。
まして、この状況で簡単に否定の言葉など返せる訳も有りません。
ただ……。
「陛下。畏れながらお聞きしても宜しいでしょうか?」
一応、あまりにも不敬な物言いは出来ないので、取り敢えず、最低限の礼儀は弁えた口調でそう問い掛ける俺。
「なんだ、我が息子よ」
未だ俺は、この蒼いオッサンの架空の息子役を演じるとは答えた覚えはないのですが、鷹揚に首肯いた後に、俺が息子役を演じる事が既定の事実の如く答えるジョゼフ。
もっとも、彼女が居る場所で、この申し出を拒否出来ない事を見越しているのは間違いないのでしょうが。
それでも、少しぐらいは悪あがきをさせて貰わなければ、すべて、この蒼いオッサンの思い通りに事を進められる事と成りますから。
「陛下は未だ御若い。亡くなったイザベラ姫の母親の代わりの新たなお妃様をお迎えに成れば、正当な血筋を引く男児を授かる事も可能かと愚考致しますが」
現状で一番簡単な……俺が影武者を演じる次に簡単で、更に実現性の高い方法を口にする俺。
もっとも、これには大きな問題点がいくつか有るのですが。
「それでは、先に内外に御ふれとして出した発表上のルイ王子の存在が消えて仕舞う事となるな」
俺の上げた代案の、一番の問題点を速攻で付いて来るジョゼフ。
そして、この部分が確かに一番の問題点。
流石に、ついこの間に発表した妾腹の王子の存在の続報を出さないと、国内の貴族の間に不穏なウワサ話が流れないとも限りませんから。
元々、現在のガリアの状態は安定しているとは言い難い状態の時に、一度、その存在を発表された王子の立太子の儀を行わないばかりか、国内外の貴族への御披露目も行わず、更に、現在、マジャール侯爵の元に預けて有る王子を王都リュティスに入れる事すら行わないのでは、其処からどんな形で妙な憶測が流れ始めるか判ったものじゃ有りません。
その上に、覚醒した夜魔の王に新しいお妃を迎えると言っても、流石に相手を慎重に選ぶ必要が有りますから…
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