悪魔の島編
EP.14 グレイの選択
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入り口から顔を出したワタルに応え、エルザは思考を止めて顔を上げた。
『これ以上は触れてはいけない』直感でそう感じたのだ。
もしかしたら、これ以上干渉すればワタルがどこか遠いところへ、自分ですら立ち入れない程遠くへ行ってしまうんじゃないか。
そんな臆病な思考をしたエルザは、今度は半分無意識に、半分意識的にワタルへ手を伸ばす。
ワタルはそんな彼女に何かを感じたのか、彼女が伸ばした手を取り、彼女はハッとした。
「……ッ」
「どうしたんだ、エルザ?」
「い、いや……なんでもない。なんでもないんだ……」
「? そうか……なら行くぞ。ルーシィ達も待ってる」
「ああ、すまない」
エルザはワタルの手を取ったままテントから出た。テントの外で待っていたルーシィとハッピーは、出てくるのが遅いエルザを心配していたが……手を繋いで出てきた二人に悪戯心から顔をにやけさせてからかう。
「あっれー? 手繋いじゃって……お熱いわね、二人とも♪」
「でぇきてる゛」
「あ、いや……違うんだ、これは……!」
「違うって言ったって、手は離さないんだね〜。ねぇ、ハッピー?」
「あい! これは完全に――」
「ルーシィ、ハッピー……貴様等、依頼が終わってギルドに帰ったら……覚えてろよ?」
「「ヒ、ヒィッ!!」
「ハ、ハハハ……おい、いいから行くぞ、お前ら」
隣で引きつった笑いを上げるワタルを、エルザは怯えるルーシィ達を睨みながら横目で盗み見る。
自分の隣に居てくれる……自分が想っている彼と、彼と繋いでいる手の温かな温もりの存在は、不思議と彼女を安心させた。
今彼は此処にいる。だからいいじゃないか、と……。
なぜ、もっと聞こうとしなかったのか。何故、この違和感の正体を解き明かそうとしなかったのか。
エルザは後にこの事を後悔する事になる。隣に立つ温もりを失う恐怖から目を背け、問題を先送りにしてしまった事を……。
それはまだ先の……でもそう遠くない話。
彼らの出す答えもまた……いや、これはここで話すべき事ではないだろう。
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